研究課題/領域番号 |
20K05715
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
的場 康幸 安田女子大学, 薬学部, 准教授 (90363051)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チロシナーゼ / X線結晶構造解析 / 反応機構 / 金属シャペロン |
研究実績の概要 |
海外グループの研究により、活性中心近傍に存在する水分子がTy活性に重要であると指摘されている。また、CadのTyr98残基に対するTyの反応機構解析からも、この水分子が水素結合ネットワークを介して触媒塩基の活性化に寄与していることが示唆された。この水分子の塩基性を変化させることを目的として、水分子と水素結合するN191残基をグリシンに置換した。その結果、本変異体はドーパミンを酸化するカテコラーゼ活性を有していたが、チラミンを酸化するフェノラーゼ活性は極めて弱かった。N191G変異型TyとCadの複合体結晶を作成し、Tyr98残基に対する反応機構を解析したところ、変異型複合体では、Cu(II)-ドーパセミキノン型中間体が観測されなかった。すなわち、この中間体の寿命延長が、フェノラーゼ活性に重要であると考えられた。本年度は、この成果を論文としてまとめ、国際学術誌に投稿し受理された。 一方、別の海外グループの研究により、細胞内でTyは銅イオンよりも多く存在する亜鉛イオンと結合し、不活性状態になっていることが示唆されている。昨年度、野生型複合体の結晶にZn(II)を添加し、その構造を解析した。本年度は、亜鉛イオン存在下でカイネティクス解析を実施した。その結果、亜鉛濃度に比べ1000~10000倍低い濃度の銅イオンの添加で、酵素活性が上昇することが確認できた。ただし、亜鉛イオン存在下では、酵素活性を最大化するために必要な時間が増加していた。また、還元剤であるヒドロキシルアミンを用いた検討から、Cu(I)の方がCu(II)よりも取り込まれやすいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tyの反応機構において、Cu(II)-ドーパセミキノン型中間体の重要性を明らかにすることができたこと、および、Tyに取り込まれたZn(II)は、Cu(I)により効率的に置換されることを明らかにできたことの2点を考慮すると、順調に研究が進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Tyの反応機構については、変異体としてN191G変異体、基質としてドーパミン・チラミンの組み合わせでしか考察しておらず、変異体の種類や基質の種類を増やし、検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行のため納入に遅延が生じたため次年度使用額が生じた。翌年度は早めに購入し、計画通りに使用したい。
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