研究課題/領域番号 |
20K05718
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺田 佳世 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (00547911)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア移行性ペプチド / α-アミノイソブタン酸 / α-ヘリックス / 両親媒性 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、植物細胞に対して高効率な、細胞膜透過性とミトコンドリア移行性を併せ持つペプチドの創製を目的としている。R2年度は、ミトコンドリア移行シグナルのコンセンサス配列σφχβφφ(σ: 親水性, φ: 疎水性, χ: 任意のアミノ酸残基, β: 塩基性)をもとに、疎水性アミノ酸としてロイシン(L)やアラニン(A)、あるいはα-アミノイソブタン酸(U、Aib)、塩基性アミノ酸としてアルギニン(R)、親水性アミノ酸としてセリン(S)を選択し、(LARL)3、(LURL)3、(LURR)3、(LURS)3という四種類のペプチドを設計、合成した。CDスペクトルや分子モデリング計算から、(LARL)3、(LURL)3は安定なα-ヘリックス構造の形成が示されたが、特に(LURL)3は疎水性相互作用によりバンドル化していることが分かった。各種ペプチドのミトコンドリア移行性は、FAM-ラベル化したペプチドをコートした金粒子を遺伝子銃法によりタマネギ表皮細胞に導入し、評価した。四種類のペプチドのうち、(LURL)3はミトコンドリア外膜タンパク質Tom20と疎水性相互作用することで、ミトコンドリアに選択的に集積することが明らかとなった。また、Aib導入によって酵素分解に対する安定性が向上したことも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述した通り、人工のミトコンドリア移行性ペプチドを設計、合成し、モデル植物としてタマネギを用いて、当該ペプチドの高いミトコンドリア選択性を示すことができた。またCDスペクトルや分子シミュレーションを用いた二次構造評価や、Tom20に対する免疫染色などにより、高いミトコンドリア選択性を示す機構についても明らかにした。初年度の計画はほぼ予定通り推進できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
R2年度に開発したミトコンドリア移行性ペプチドを用いてモデル物質送達を行い、当該ペプチドの有用性を検証する。モデル物質を内包したミセルやベシクルの細胞内取り込みにより、当該ペプチドの細胞膜透過性についても評価する。また、これらの結果をペプチド設計にフィードバックし、ミトコンドリアへの高効率な遺伝子導入を可能とするペプチドの開発に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画段階では、種々の植物の培養細胞や組織を用いる予定であったが、予備検討の結果、培養や育成の必要がないタマネギを用いた評価を採用した。このため、植物の培養等にかかる経費として計上していた消耗品費の一部が低く抑えられた。また異動により、研究計画段階に計上していたパーソナル有機合成装置が不要となった。その分を異動により新たに生じた消耗品費に充当し、残額は次年度新たなペプチド合成試薬として使用する。
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