研究実績の概要 |
引き続きHepG2の時計遺伝子の発現リズムがazaCの低濃度かつ長期暴露で回復するメカニズムについて検討した。 上記azaC処理で発現が上昇する遺伝子で時計遺伝子の発現に関与しそうなものを、DNAマイクロアレイの結果を参照しつつ、qPCRで確認してきた。まず、azaC処理3週間から6週間までのHepG2から抽出したmRNAをテンプレートにして、直接時計遺伝子の発現について、Bmal1, Per2, Per1, Cry1, Rora, Reverbaなどを調べたが、いずれも処理期間に依存した発現上昇などの変化は見出さなかった。また、Bmal1、Per2の上流のプロモータのメチル化解析を同じ期間azaC処理したHepG2からゲノムを抽出しmethPCRを用いて行ったが、皮膚由来の正常細胞株(HaCaT)と比べて、有意なメチル化の変化は見られなかった。これらのことから、この現象は時計遺伝子のプロモータ領域の直接のメチル化に起因しない可能性が示された。 一方で、時計遺伝子リズムの調節には、時計遺伝子のみならず、様々なコファクターやnuclear matrix protein、oncogeneと呼ばれる遺伝子などの関与も示されている。この中でも、アレイで有意に発現が上昇しているDNA topoisomerase 2遺伝子に着目した。その結果、qPCRでmRNAの発現を検討したところ、処理期間の長さ依存的な遺伝子の発現上昇が認められた。この遺伝子は既に正常にリズムを刻む細胞において、阻害剤添加実験で、周期長が変化することが報告されており、リズム調節に重要な役目を持つことが知られている。今回の検討もこれを補強する結果となっており、今後はHepG2でのazaC処理による時計遺伝子リズム回復のメカニズムのキー分子として更なる解析を行う。
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