本研究課題では、Fungi界に広く分布するペプチド環化因子UstYaホモログ(旧DUF3328)の反応機構解明を目的としている。前年度までに、代表的な当該タンパク質であるustiloxin環化因子のUstYaを標的として、大腸菌異種発現による単離精製・構造解析・in vitro反応を複数の株・ベクター・融合タグ・培養条件で検討してきたが、いずれもタンパク質は発現するがほぼすべて不溶化成分に行ってしまうという問題点があった。 今年度は、UstYaに加えて、ustiloxin前駆体ペプチドの環化に必須なUstYbおよびUstQという2つのタンパク質についても大腸菌での異種発現を行い、UstYaと合わせてのリフォールディング、またin vitro反応を行った。ホモログであるUstYaとUstYbが複合体を取って初めて構造が安定する可能性を考えての実験系であるが、複合条件での構造安定化は観察されず、in vitroでの反応も見られなかった。また、同じクラスの環化因子であり、単独でペプチド環化を触媒すると考えられるAprYについても、同様に大腸菌異種発現の検討を行った。AprYをHisタグ融合状態で発現させると、単独バンドではないものの、ウエスタンブロッティングで可溶化成分に発現は確認された。そこでHisタグカラム精製を行い、in vitro反応を行った。現在、反応系のLC-MS/MS測定を行っているところである。 このように、現在標的環化因子の結晶構造・機能解析を完了するには至っていない。しかし、可溶化成分でのタンパク質発現を可能にするバッファー条件や、環化因子の細胞内動態に関する知見は蓄積することができた。これらの知見は、今後の本生合成系を利用した環状ペプチドのデザイン・生合成・生産系の実現につながると考えている。
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