海洋天然物アプリロニンAは二大細胞骨格タンパク質であるアクチンとチューブリンのタンパク質間相互作用を誘導し、生成したこれらの三元複合体が鍵となり、前例のない強力な抗腫瘍性を発現する。その詳細についての研究は、天然物自身が誘導化に限界があるため、アプリロニンAを基軸とする単純な構造のハイブリッドアナログを設計する必要があった。アプリロニンAの特異な作用機序に着目すると、アクチン脱重合部位を変換することが効率的な構造活性相関になることが考えられた。 そこで、アクチン脱重合天然物の側鎖部を参考にし、合成が容易かつ高活性なアクチン脱重合分子を創出することにした。2021年度までにC31位の置換基をアシル基が最適であることもあわせて明らかになったので、アシル基を変化させた各種アナログを合成し、アクチン脱重合活性を評価した。その結果、アセチル基が最適であることが判明し、アプリロニンAの側鎖部と同等以上の活性を示した。 さらに、アプリロニンAのマクロラクトン部の構造活性相関研究を行うにあたり、アプリロニンA-スウィンホライドAハイブリッドの新規合成法を開発し、総工程数37段階と従来の手法より33段階の削減を達成した。
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