ポリフェノールオキシダーゼ(PPOもしくはチロシナーゼ)の働きにより,モノフェノールはジフェノールを経由して,キノンへと酸化される.その過程にビタミンCなどの還元剤を添加することで,レドックス反応が進行し,反応系中にジフェノールが蓄積する.本研究では,このようなPPOと還元剤によるレドックス反応をモノフェノールからジフェノールへの変換に利用し,新しい機能性分子を開発することを目的とした. 研究期間全体を通して,生理活性ペプチドのレドックス反応による構造修飾および,PPOの基質もしくは阻害剤として働くことが予測される天然フェノール類の化学合成に関する研究を行った.残念ながら生理活性ペプチドについては,レドックス反応の酸化生成物の構造を決定することはできなかった.しかしながら,ヤナギ科の植物から得られたフロレチン配糖体の構造訂正とそのPPO阻害活性の評価,ムクロジ科の植物から単離されたポリフェノール配糖体の構造改変による新しいPPO阻害剤の開発および,スグリ科の植物中の対称性の高いポリフェノールの化学合成と構造訂正を達成した.また,ミソハギ科の植物などより得られたフェノール配糖体を化学合成し,PPOとビタミンCを用いたレドックス反応により,それがジフェノール配糖体へと変換できることを確認し,さらに,植物抽出物中にそのジフェノール配糖体が強い抗酸化性を持つ天然物として存在していることを新たに突き止めた.これら一連の成果を複数の学術論文にまとめ,発表した.
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