研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュの視神経は,損傷後も再生が可能であり,約3~4ケ月で視覚機能が回復する。このゼブラフィッシュ視神経のクラッシュモデルを作成し,視神経再生に関与する分子の活性化がどのように起こるのかを時系列的に追いかけた。特に,魚類では網膜内の神経細胞はアポトーシスを回避する機構が作動することから,損傷後24時間以内に発現が増加,活性化する分子について着目した。 視神経損傷後,HSF1 mRNAが,視神経損傷最も早く発現が増加する分子であることを確認した。このHSF1の発現は、Transglutaminase(TG)ファミリーの一つであるFactorXIII-Aの活性化に深く関与していた。また,iPS細胞の誘導因子として知られる3つの山中ファクター, Klf4,Oct4およびSox2の3つの転写因子が、それぞれ一過性に発現増加することが確認されたが,これらもHSF1の制御を受けることがモルフォリノを用いた発現抑制実験によって判明した。HSF1がFactorXIII-Aの活性化を誘導していることが強く示唆されたため,他の代表的TGファミリーの一つであるTG2の発現についても探索した。その結果,TG2は視神経損傷後30分をピークとしてHSF1よりさらに早い発現が一過性にみられ,この発現はHSF-1の制御を受けないことが判明した。逆にTG2の特異的モルフォリノ投与実験によりTG2の発現抑制を行うと,HSF1をはじめ、3つの山中ファクターも著しく発現制御を受けることが判明した。本研究により,視神経損傷後のTG2の発現が,HSF1の発現誘導を介して山中ファクターおよびFXIII-Aのの発現増加に深く関与していることが解明された。これらの分子の発現増加により,アポトーシスが回避され神経細胞のリプログラミングが誘導されることが強く示唆された。
|