生物活性分子の標的同定はその化合物が関与する生命現象の解明に有用であり、これまでに様々な手法が提案、開発されてきた。 本研究ではアミノ酸のアミノ基とカルボキシ基が第13族元素であるホウ素に結合した5員環状のキレート化合物(ボロキサゾリドン)に着目し、その形成を鍵としたタンパク質の化学修飾に取り組んだ。 一昨年度はアミノ酸の側鎖の違いよるキレート形成能への影響を明らかにし、生理的温度に近い37℃で1時間以内にボロキサゾリドンを形成可能な条件を見出すことに成功した。昨年度は更に基質適用範囲を拡大すべく、アミノ酸の種類を追加し、タンパク質を標的とする生物活性化合物について検討し、最高95%まで収率を向上させることに成功した。 最終年度である本年度はホウ素原子に結合している芳香環(アリール基)上の置換基側にも着目し、アフィニティー精製への応用や蛍光検出に向けた取り組みを実施した。まずアフィニティー精製用に設計したホウ素化合物では、その合成に必要な置換基の導入は困難を極め、更に得られたホウ素化合物の空気中での安定性は低いことも判明した。反応条件や精製工程を見直すことで所望の化合物を取得可能となった。一方、蛍光検出用に合成したホウ素化合物は空気中での安定性が高く、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製も可能なことから有用性が期待された。今後はこれらを利用したアフィニティー精製、タンパク質蛍光検出へと展開していく。
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