研究課題/領域番号 |
20K05728
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梅川 雄一 大阪大学, 理学研究科, 助教 (20587779)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 極長鎖脂肪酸 |
研究実績の概要 |
ネクロトーシスはプログラムされた細胞死の1つであるが、アポトーシスと異なり細胞膜が断片化することが特徴である。近年このプロセスにおいて極長鎖脂肪酸が細胞膜中に蓄積されることが示されておりネクロトーシスとの関連が注目されている。そこで本研究では極長鎖脂肪酸が脂質二重膜の膜物性に与える影響を詳細に解析することを目的としている。 極長鎖脂肪酸は自身にほとんど官能基を含まないことから直接の観測が困難である。また分子量が比較的小さいため、大きな蛍光団をもつような標識は分子の性質を大きく変えてしまう恐れがある。そのため極長鎖脂肪酸にテトラエンを導入した新規蛍光標識体の合成法の確立を目指し検討を行った結果、比較的短工程での調製法に目途を立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光標識極長鎖脂肪酸の合成は本研究の重要なステップである。これまでに報告されている脂肪酸やテトラエンの合成法を参考に、プロパルギルアルコールを出発原料とする脂肪酸部分と2,4-ヘキサジエナールから合成したトリエン部分とをカップリングすることで脂肪酸の末端付近にテトラエンを導入する手法の検討を行った。二重結合の異性化と精製法に課題が残っているが、概ね合成法を確立することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光標識極長鎖脂肪酸の合成を完了させる。また標識位置の異なる蛍光標識体の合成の検討を行う。並行して合成した標識体を用いた脂質膜中での物性測定を行う予定である。また、アルキル鎖の短い脂肪酸の蛍光標識体であるtrans-パリナリン酸との比較を行うことで、アルキル鎖長の違いが膜物性に与える影響の違いについて検討を行う。 加えて脂質膜自体の流動性について31Pまたは13C固体NMR測定を行い、極長鎖脂肪酸の添加による変化を観測しする。極長鎖脂肪酸自身についての蛍光測定結果と合わせて膜物性に与える役割を考察し、ネクロトーシスとの関連を探る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は固体NMR測定なども平行して進める予定であったが、今年度は蛍光標識体の合成に焦点を絞って取り組んだため、固体NMR等の使用料や消耗品代が抑えられた。今後は平行して各種測定を進めている予定であり、その装置使用料や消耗品代に充て当初予定通り研究を実施していく。
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