令和4年度は以下の研究成果を得た。我々がこれまでに様々な環境中から単離してきた、共培養することによりコロニー形態を変化させる異種細菌の組み合わせ複数組について、(1)コロニー形態変化を誘導する複数種の細菌が分泌するシグナル分子の精製を試みた。その結果、相互作用の種類により種々の物性のシグナル分子が得られてきており、最終精製程度まで進められた活性物質については、非常に親水性の高い糖質であることが示唆されるデータを得た。現在、構造解析を進めている。(2)上記細菌との共培養により誘導されたコロニー形態変化の原因となる細胞表層分子の解析を試みた。その結果、共培養によりこれまでに報告のない新規の多糖を分泌することが示唆された菌種や、既知の細胞表層多糖ではあるもののその生産が促進している菌種など、様々な菌種の存在が示唆された。現在、新規物質について構造解析を進めている。また、これら細胞表層分子について、新しい生物活性も見出だした。(3)共培養によりコロニー形態変化を誘導された細菌について、接着能や薬剤感受性の変化を検討した結果、単独培養時と比較して変化が認められた。また、共培養により新規構造の多糖を生産する細菌、および、これを誘導する細菌について、ゲノムDNAを抽出、精製し、次世代シークエンサーによるドラフトゲノム解析を行った。さらに、この異属細菌の組み合わせについて、高分解能LC/MS/MSシステムを用いたプロテオーム解析により、共培養時と単独培養時におけるタンパク質発現の比較も試みている。(4)これまでに単離してきた微生物種に加えて、病原性菌も含めた新たな微生物種の組み合わせも見出しており、これらについても解析を進めている。
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