研究課題/領域番号 |
20K05736
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大崎 愛弓 日本大学, 文理学部, 教授 (50161360)
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研究分担者 |
福山 愛保 徳島文理大学, 薬学部, 客員教授 (70208990)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物成分 / 蛍光化合物 / 蛍光特性 / 細胞導入 / 蛍光イメージリング |
研究実績の概要 |
熱帯産薬用植物Quassia amaraに含まれる蛍光化合物カルボリン類縁体について,化合物の単離と構造解析を行った。カルボリン類縁体7種についての蛍光特性について調べたところ,水中において,環内の置換基数の減少につれ蛍光強度が増大した。 また,最も蛍光強度の強かったエチルカルボリンについては,水―エタノールの混合溶液中でのエタノール含量が増加するにつれ,蛍光強度が上昇し,明らかなAIEE(Aggrigation-induced emission enhancement)が認められた。天然由来化合物でのAIEE効果の報告は非常に少なく,本研究は新たな植物由来天然蛍光化合物の工業への応用を指向するものであると考えられる。 一方,Amarastelline類縁合成物質を用いた細胞導入実験において,細胞核へなぜ入らないのかの検証実験では,核と細胞質を分離したのち,核単体へのAmarastelline Aの導入を試みたが,やはり核内には導入できなかった。一方,カンチンユニットをいくつか変えて合成したうちのオクチル基とした類縁合成物質においては,細胞核内部の核小体への輝度の集積が認められた。Amarastelline Aには核内へ全く導入できないなんらかの要因があるものと考えられた。おそらくは細胞質中の可溶性のたんぱく質(多少は構造体にも残存している)との相互作用があり,捕捉されてしまう可能性が考えられた。今後は,たんぱく質が何であるのかを同定したい。 一方,柑橘類果皮に含有される蛍光成分について検討をおこない,3-ヒドロキシフラボノール類に対して,ESIPTに基づく,黄色蛍光が認められた。pHを変化させることにより,それらの蛍光特性について検討をおこなった。その他,多環式のアルカロイドにおける蛍光物質のライブラリ作成のため,呉茱萸由来の蛍光アルカロイドについて単離同定をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より予定していた,Amarastelline Aは何故細胞膜を通過しないのかという問いに対して,核と細胞質を分離し,蛍光導入実験を行い,その結果,やはり通過しないことを検証することが出来たことによる。一方,カルボリン類縁体を多く分離し,それらのAIEE効果について検討を行った。その結果,天然物としては,類例をみない有効な結果を得ることが出来たことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでの進捗についてまとめ,雑誌に投稿を行うこととする。他,柑橘類果皮成分のポリメトキシフラボン類の蛍光については,さらに化合物を蓄積し,蛍光特性について調べることとする。 これまで,何度か単離をおこなったが構造の確定に至らなかったフサザクラ由来の蛍光化合物について,X線にて構造を確定できるようにする。他,N含有の多環化合物についての化合物群については,シリーズを増やし,蛍光化合物の蓄積を続行することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
天然蛍光化合物の蛍光特性の測定には蛍光スペクトルが必須であるが,蛍光化合物測定用の蛍光スペクトルが老朽化のため大変調子が悪く,機材の調整を行うため(新規機材の確保も含め,費用の支出を抑えた)次年度は,蛍光スペクトルおよびUV-visとも調整を行うことにより,蛍光特性を正確に測定することを考えている。
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