研究実績の概要 |
多環アルカロイドの蛍光を調べる目的で,独自に構築した天然エキスライブラリ2000種について,蛍光スクリーニングを行った。その結果,いくつかの検体が強い蛍光を有することが明らかとなった。その一つである生薬,ゴシュユ(呉茱萸,Tetradiun ruticarpum,ミカン科)は,健胃鎮痛利尿作用があるとして,果実を用いている。ゴシュユの果実 505gを,粉砕し,メタノールにて抽出し,シリカゲルクロマトグラフィー(Wako gel C-300)を行い分画したのち,強い発色を持つ分画部に対して,逆相HPLC(Cosmosil 5C18MS-II,Cosmosil PBr, Chromatorex NH)を用いて,蛍光化合物の精製を行った。その結果6種の化合物を単離し,各々のNMRデータから,rutaecarpine (1), evodiamine (2), hydroxyrutaecarpine (3), 5-methoxy-10-hydroxy-dimethyltryptamine (4), dehydrorutaecarpine (5), goshuyuamide II (6),であると同定した。これらの化合物に対して4種の溶媒(CHCl3,CH3CN,MeOH,H2O)における溶媒特性について検討をおこなった。Evodiamine誘導体としての骨格に注目すると,C-14とC-14aで形成するIndol unitとQuinazilinone unitの共役系の存在が,蛍光強度に影響していることが分かった。単離収量の多い化合物1を用いて,HeLa細胞への染色を行った結果,生細胞への導入は,その毒性からかうまくいかなかったが,エタノール固定を行うことにより,うまく細胞染色を行うことができ,その染色は鮮明である,細胞全体に認められた。
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