研究課題/領域番号 |
20K05739
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
谷生 道一 国立感染症研究所, 次世代生物学的製剤研究センター, 主任研究官 (10416662)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | M-フィコリン / C反応性タンパク質 / 凝集 / 可逆的 |
研究実績の概要 |
M-フィコリン基質結合ドメイン(FD1)とC反応性タンパク質(CRP)の可逆的凝集活性の分子機構の解明を目指し、FD1変異体とCRPとの凝集活性解析および凝集阻害剤探索を行った。初年度の解析から、FD1-CRP凝集体はCRPの基質であるホスホコリン(PC)により完全溶解し、カルシウム添加による再凝集も完全阻害することが明らかとなったが、PCの類似分子であるコリンおよびアセチルコリンは凝集形成を全く阻害しなかった。これらのことより、FD1-CRPの凝集形成はCRPの基質結合部位を介した特異的な相互作用によって行われていることが明らかとなった。一方、FD1-CRP凝集体に、FD1の基質であるNアセチルグルコサミン(GlcNAc)を添加すると、部分的に凝集形成を阻害することが分かったが、GlcNAc類似分子であるグルコースでは全く阻害されなかった。これらのことより、FD1の基質結合部位も凝集形成に一部寄与していることが示唆された。しかし、GlcNAc結合能欠失FD1変異体であるH284AではCRPとの凝集活性を保持し、GlcNAcによる凝集阻害は確認できなかった。また、140 mM NaCl環境下では野生型FD1(WT)に比べH284Aでは、CRPとの凝集活性は弱いが、より低塩濃度条件ではH284Aの方がWTよりもCRPとの凝集活性が強いことが分かった。また、WTにおいても低塩濃度条件ではGlcNAc添加による凝集阻害が抑制されることから、FD1の基質結合部位の凝集形成への寄与は間接的であり、FD1-CRP複合体・凝集体の溶解度に影響することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
凝集形成の完全阻害および部分阻害をする分子の発見により、凝集体におけるCRPおよびFD1の分子配置の知見を得ることができ、またPC特異的な凝集阻害結果より、凝集形成のカルシウム依存性が、CRPの基質結合部位に存在する二つのカルシウムイオンによるものと断定できたため。
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今後の研究の推進方策 |
凝集体中のFD1およびCRPの分子配置についてより詳細な知見を得るためには、分子レベルにおける観察が必要であるが、電子顕微鏡を用いた解析では未だ明確な結果が得られておらず、今後、条件検討を進める。またこの凝集活性を用いた新規CRP検査法技術の開発検討過程において、FD1-CRPの凝集形成と同じ条件において、M-フィコリン以外にCRPと可逆的に凝集する血清成分が存在することが明らかとなったため、この成分の特定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが、令和5年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和4年度分についてはほぼ使用済みである。
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