研究課題/領域番号 |
20K05740
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 努 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (10357668)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超分子複合体 / ペルオキシレドキシン |
研究実績の概要 |
本研究は、ペルオキシレドキシンの新規な超分子複合体の生成メカニズムを解明し、再現性よく該複合体を得て、その構造や機能を明らかにしようとするものである。2020年度は、植物由来のペルオキシレドキシンであるAtPrx6が複合体を形成する条件検討を行った。ここでAtPrx6の超分子複合体は、本来は電顕によりチューブ状の形状を確認すべきであるが、条件検討のたびに電顕を稼働させるのは現実的でないため、動的光散乱(DLS)による粒度測定により複合体形成を確認した。 本課題申請時は、AtPrx6溶液を脱塩カラムにより脱塩することにより複合体形成を観測していた。しかしその方法ではタンパク質濃度にかんする再現性にかける。したがって本年度は、AtPrx6溶液を緩衝液に希釈することにより複合体形成をはかった。その結果、pH4.6付近の酢酸ナトリウム緩衝液でAtPrx6溶液を希釈した場合に粒子径が増加することが明らかになった。ただし、複合体形成は多分子反応であるため、より高濃度での実験系を設計することが必要と考えられる。 以上に加えて、Prxの分子会合における相互作用について検討した。Prx分子の集積のうち、リング構造をなす「低レベル集積」と超分子構造をなす「高レベル集積」がどのように区別しうるか知るための基礎データとするためである。超好熱性古細菌由来Prxのリング構造では疎水性相互作用が重要な働きをすることが明らかになり、疎水性の化学修飾によってその集積を制御することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
緊急事態宣言にともなうテレワークの実施により、実験のためのまとまった時間をとることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
動的光散乱(DLS)による粒子径の測定にばらつきがあるのが現在のところの大きな課題である。改善策として、高タンパク質濃度での測定を可能にするような実験系の構築を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集等のために国際学会2件を含む学会に参加する予定であったが、コロナの影響で学会が中止になり、次年度使用額が多く生じた。次年度も国際学会が中止になる可能性は充分にあるが、その場合は当初の予定にくわえて電顕消耗品や電顕受託観測などに充当する。
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