研究課題/領域番号 |
20K05745
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神谷 由紀子 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00527947)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | miRNA / siRNA / RISC / 可視化解析 / アンチセンス核酸 |
研究実績の概要 |
mRNAやノンコーディングRNAの機能を制御することが可能なsiRNAやアンチセンス核酸は、疾患に関連するタンパク質やRNAを阻害する核酸医薬として期待されている。申請者らはこれまでにRNA干渉の機構に着目し、非環状型の人工核酸Serinol Nucleic Acid (SNA)およびL-aTNAを用いて、活性の向上と副作用の抑制を実現するsiRNAや、人工塩基の導入よりmiRNA阻害活性の向上を達成したanti-miRNA oligonucleotide (AMO)の開発に成功してきた。本研究は、これまでに開発した非環状型人工核酸からなるsiRNAおよびAMOの活性発現機構を明らかにすることを目的としている。そのために、AMO-miRISCおよびsiRISC-mRNA複合体を検出する手法を開発し、細胞内可視化解析を実施することを目指している。 2020年度は、siRISC-mRNA複合体に着目し、本複合体を可視化するための技術開発を進めた。本複合体の形成にともない、RISCの構成因子とmRNAが近接することを利用して、近接ライゲーションと核酸増幅に基づくシグナル増幅法の開発を目指した。近接ライゲーション・シグナル増幅のための各種条件の検討を実施した。 また、次年度以降のAMO-miRISCの解析を見据え、miRNAに対する最適なアンチセンス核酸の設計開発も行った。AMOの骨格であるSNAと標的であるRNAのヘテロ二重鎖の結晶構造の決定に成功した。非環状型人工核酸の自己相互作用を抑制するための人工塩基を開発し、高活性なアンチセンス核酸の設計基盤を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RISCとmRNAの間の近接ライゲーションを実現するために、RISC抗体に対するDNAタグの複合化、および、mRNAに対するDNAタグ付きアンチセンス核酸を設計した。抗体とDNAタグおよびアンチセンス核酸とタグの間の距離などの検討を行い、細胞内で近接ライゲーションと遺伝子増幅を試みたところ、一部のサンプルでシグナル観察ができた。ただ、シグナルの強度は期待したものではなかったため、さらなる検討が必要であることも分かった。 一方、miRNAに対するアンチセンス核酸の設計開発においては、人工塩基の導入による標的miRNAに対する親和性の増強と、SNAの自己相互作用の回避が高活性化につながることを明らかとした。また、AMOの骨格であるSNAとRNAのヘテロ二重鎖は、まきの緩いらせん構造を形成しており、他の人工核酸とRNAとのヘテロ二重鎖では見られないユニークな構造安定化のしくみを有していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、siRISC-mRNAの可視化に関しては、シグナル強度の増大に向けた検討を実施する。具体的には、DNAコンジュゲート体の特異性、DNAタグ・環状テンプレートの設計、mRNA-RISC複合体の安定化である。また、本年度開発したmiRNAに対するアンチセンス核酸の設計に基づき、AMO-miRISCの可視化解析へと展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言により研究の開始が遅れたこと、また参加予定であった学会がオンライン開催へ切り替わったため、未使用額が生じた。さらに、年度末には必要な試薬や消耗品等がコロナウイルス検査の関連で在庫切れのための納期未定が続いたことも、未使用額が生じた理由である。 次年度は、オンライン用の機材の整備や、消耗品の早期購入により、経費を使用していく予定である。
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