研究課題
イオンチャネル型 GABA(A)受容体は、中枢神経系における主要な抑制性神経伝達を担い、その異常は不安障害や睡眠障害、うつ病や統合失調症など多くの精神疾患に関与することから、様々な治療法や新規向精神薬開発の標的となっている。本申請課題では、生きた脳や脳組織、神経細胞といった天然環境下における内存性 GABA(A) 型イオンチャネル受容体に対する特異的化学標識を基軸とする新規の薬剤アッセイおよびスクリーニング系を構築することを目的としている。これまでに、当研究室で独自に開発したリガンド指向性アシルイミダゾール (LDAI) 化学手法を用い、初代培養神経細胞や、マウス脳スライス、さらには、生きたマウス脳内に存在する内存性 GABA(A) 受容体のリガンド結合部位近傍への蛍光色素の導入を試みてきた。本手法は、遺伝子工学的操作を必要とせずに内在性タンパク質を化学標識可能な点で、既存の方法とは異なる新規のケミカルバイオロジー研究の展開と、タンパク質型バイオセンサーの構築を可能とする。具体的には、受容体とリガンドの構造情報に基づいて数種のLDAI ラベル化剤を設計し、生きたマウスの側脳室にラベル化試薬を直接投与することで、内存性 GABA(A) 受投与のラベル化とイメージングを試みた。マウス脳を単離後、共焦点レーザー蛍光顕微鏡やwestern blotting による詳細な解析の結果、生きたマウス脳内で内存性 GABA(A) 型イオンチャネル受容体を特異的化学標識出来ていることが明らかになった。成果の一部は、第102回日本化学会年会や、プレプリント誌に報告し (bioRxiv 2021.12.21.473647)、現在査読ありの学術誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、培養細胞上に強制発現したGABA(A)受容体に加えて、初代神経培養細胞上の内在性受容体の特異的ケミカルラベル化に成功している。加えて、生きたマウス脳内のシナプスに存在する内在性GABA(A)受容体のケミカルラベルに世界で初めて成功しており、研究はおおむね順調に進行しているものと判断できる。
これまでに得た内在性神経伝達物質受容体のケミカルラベル化の知見に基づき、生きたマウス脳内に存在する内在性GABA(A)受容体上に化学センサー等を導入する事で、受容体のバイオセンサー化を試みる。
COVID-19 感染拡大の影響により、海外からの消耗品納品の遅れや。予定していた国際および国内学会がオンライン開催に変更されたため。
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