研究課題/領域番号 |
20K05747
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
蓑島 維文 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20600844)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 蛍光プローブ / in vivoイメージング / 骨組織 / 骨細胞 / pH応答性色素 |
研究実績の概要 |
骨芽細胞の活性を検出するため、骨芽細胞が骨を形成する際に分泌するアルカリフォスファターゼ(ALP)の活性を検出する蛍光プローブの合成に着手した。一方で、これまでの蛍光波長増大型のプローブではなく、蛍光波長シフトによってpHを計測できるレシオ型蛍光プローブの開発も行った。蛍光波長シフトを利用することで、異なる二波長の蛍光強度の比からプローブの局所濃度の差に依存せず正確なpHの値を求めることができると期待した。レシオ型蛍光プローブの設計において、以前に開発したローダミン型pH応答性色素をアクセプターとした蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用することとした。中性環境下ではローダミン型色素は閉環体となり可視光領域の吸収がなく、酸性環境下で吸収が現れることから、ドナーとなる蛍光色素を連結させることで重なり積分の変化によりFRETを制御できるものと考えた。ドナーとなる色素はローダミンの吸収領域に蛍光を示すクマリン誘導体を選択した。このドナー色素をローダミン型pH応答性色素と連結し、色素同士の会合を防ぐためにシクロヘキシルリンカーを導入し、レシオ型応答を示す色素を合成した。合成した色素の吸収・蛍光特性を各pHにおいて調べたところ、期待した通り、pHが低くなるに連れてドナー色素由来の蛍光が低下し、アクセプター色素由来の蛍光が上昇することが見られた。二波長の比を取ったところ、酸性領域のpH4-6の間で線型の応答を示しており、この領域におけるpH値を正確に測定できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に加え、蛍光波長のシフトによる定量的なpH計測プローブが開発できることを考案し、FRETを利用したレシオ型色素の開発に着手した。合成を完了し、pHに依存した二波長における蛍光強度の変化を観察し、低pH領域におけるpH値の測定を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に興味深い成果が得られた、蛍光波長が変化するレシオ型蛍光色素に骨組織標的能を有するビスホスホネート基を導入し、プローブの合成を完了させる。プローブ合成後、ヒドロキシアパタイト上での蛍光シグナルのpH変化を測定し、二波長の蛍光シグナル比より骨表面モデルにおけるpH値の計測を行う。その後、in vivoイメージングへと展開し、生きた動物骨組織におけるpH値、ならびにその変化をイメージングする。加えて骨芽細胞の活性を検出する蛍光プローブの合成も引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響でオンライン会議へと変更になった学会があり、旅費が当初の予定より少なくなった。また色素開発を重点に置いたため、生物実験に係る消耗品費が抑えられたことも影響した。次年度は生物実験も進める予定であるため、研究遂行のための物品経費として使用する予定である。
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