生体骨組織では骨機能維持のために様々な細胞の働きによって骨代謝が行われているが、これらの細胞の生体内における機能にはいまだ不明な点が残されている。本研究では、骨代謝に関わる細胞機能を生体イメージングによって直接可視化し、明らかにするためのツールとなる蛍光プローブの開発を行う。特に、骨細胞の骨溶解機能、骨芽細胞の骨形成機能に関与する酵素活性を検出できる小分子蛍光プローブを開発する。蛍光プローブをマウスに投与し、骨組織を生体イメージングにより観察することで、骨細胞、骨芽細胞の機能を細胞レベルで可視化し明らかにする。本研究で得られる成果は骨代謝における細胞機構の理解、ならびに骨代謝の異常に伴う疾患の治療法の開発に役立つものと期待できる。 今年度はマルチカラーイメージングによる骨細胞の局在と低pH領域の同時マッピングに向けて、骨細胞のラベルに用いられる緑色、赤色蛍光タンパク質と異なる波長域に蛍光を示すpH応答性プローブの開発を行った。以前開発したpH応答性ローダミンスピロラクタムより短波長側に吸収・蛍光を示すローダミン骨格を選択し、pH応答性の色素を設計した。蛍光スペクトルを測定したところ、550 nm付近に蛍光波長の極大を示し、以前のものよりも40 nm程度短くなったため、赤色蛍光タンパク質で標識された骨細胞、破骨細胞と同時に観察できることが期待できた。一方で、pH応答性が変化しており、従来の設計ではpHが4以下まで低下しないと蛍光が上昇せず、破骨細胞の骨溶解時に形成するpHに適していなかった。そこで、pH応答性はスピロラクタム環の開く反応に依存しているという知見に基づき、ラクタム環のアミド構造について検討した。その結果、pH5以下で応答し、蛍光強度が上昇する色素構造を見出した。
|