研究課題/領域番号 |
20K05748
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 卓男 大阪大学, 薬学研究科, 講師 (80596601)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オリゴ核酸 / 核酸医薬 / 細胞膜 / 膜透過性 / 人工核酸 |
研究実績の概要 |
mRNAなどを標的とするオリゴ核酸(siRNAやアンチセンス核酸など)は、抗体に続く次世代医薬として注目されている。しかしながら、高極性なオリゴ核酸は元来「細胞膜透過性」が低く、細胞に負荷をかける遺伝子導入法を使用しなければ高い活性を得ることが難しい。このことは、オリゴ核酸を医薬として開発する上で長年の懸念材料となっている。そこで本研究では、細胞膜透過性を有する特殊なオリゴ核酸の創製とその医薬応用を目指す。 これまで、脂肪酸の膜透過性に着目し、脂肪酸コンジュゲート型オリゴ核酸(アンチセンス核酸)を多数合成してきた。さらに、それらの膜透過性を人工膜透過性試験にて評価してきた。その結果、長鎖脂肪酸を複数コンジュゲートした場合は、予想に反して膜透過性が低下する傾向が明らかになった。この結果を理解するため、粒子径を測定したところ、膜透過性が低下したオリゴ核酸は比較的大きな粒子(ミセル)を形成することが明らかになった。同じ脂肪酸でも、コンジュゲート位置によって膜透過性や粒子径は大きく変化し、その最適化が重要と考えている。 また、細胞系評価では、脂肪酸コンジュゲート型オリゴ核酸の多くが非コンジュゲート型と比較して細胞内に移行しやすいことが明らかになった。一方で、その多くはリソソームへと蓄積しており、活性を引き出すためにはリソソーム脱出が鍵と考えられる。今後は、脂肪酸のコンジュゲート位置やリンカー構造の最適化を実施する。 また、疎水性の高い人工核酸との組み合わせを検討し、オリゴ核酸の細胞膜透過性向上につながる基盤技術を創出する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果から、膜透過性と粒子径には良い相関関係を見出している。また、それらと細胞系での活性(アンチセンス活性)にもある程度の相関性を見出している。従って、これまで確立してきた評価系によって高い細胞膜透過性を有するオリゴ核酸をスクリーニングできると考えている。スクリーニングに必要なオリゴ核酸の合成に関しても順調に進んでいる。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、脂肪酸のコンジュゲート位置やコンジュゲート方法(リンカー構造)が重要であると明らかになってきている。そこで、今後はそれらに重点を置いて評価を進めていきたい。また、一般的に細胞膜透過性が向上すると言われている構造(細胞膜透過性ペプチドなど)との組み合わせに関しても検討する。最終年度であることから、基礎物性の優れたオリゴ核酸については細胞系での評価に力を入れていきたい。また、これまでの結果を学術論文としてまとめていく。
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