研究課題
グラム陰性菌の外膜成分リポ多糖(LPS)は、代表的な自然免疫活性化因子であり、多糖の末端に活性中心である糖脂質リピドAが結合している。LPSやリピドAは、ワクチンの効果を高めるアジュバントの候補物質だが、代表的な大腸菌型は致死毒性も有するため、その活性の制御が必須となる。我々は近年、細菌-宿主間ケミカルエコロジー研究の観点から、生体内環境に生息する共生菌ならば低毒性な免疫調節因子を有すると考え、腸管パイエル板共生菌のリピドAが、低毒性ながら粘膜アジュバントとして優れた活性を示すことを明らかにし、リピドAを介した免疫調節機構の分子基盤解明とワクチンマテリアル開発を進めてきた。一方で近年、抗原とアジュバントの複合化により、効率的な抗体産生が誘導されるというセルフアジュバント効果が報告されている。抗原との複合化によりリピドAのアジュバント作用を最大限に引き出すためには、リピドAの自然免疫活性化能を保持しつつ、抗原と複合化させる必要がある。そこで本研究では、天然リポ多糖構造をミミックする戦略により活性を保持可能なリピドA修飾法を検討し、自然免疫活性化に加え第二の機能を付加した高次機能化リピドAの合成戦略確立を目指した。2022年度までに、マンニトール誘導体を二量化した糖鎖ミミックリンカーを開発し、これを介して、がん関連糖鎖抗原であるTn抗原とリピドAを複合化したアジュバント‐抗原複合体の合成を完了し、自然免疫活性化作用も保持できていることを確認した。今後は、マウスを用いたin vivo実験により、がんワクチンとしての機能を評価する予定である。また、共有結合による複合化に加え、より簡易な複合化戦略として、脂質ナノ粒子(LNP)の使用も検討した。2022年度は、フローリアクターを用いることでリピドAを定量的にLNPに導入可能な系を確立し、リピドA‐LNPの自然免疫活性化能も確認した。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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