研究課題/領域番号 |
20K05751
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
遠藤 智史 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (60433207)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オートファジー / Atg4B / 構造活性相関 / 前立腺がん |
研究実績の概要 |
2021年度は以下の項目について明らかにした。 ①リード化合物の構造最適化と評価:リード化合物はホスホリパーゼA2 (PLA2) 阻害剤として知られるが、見出したAtg4B阻害活性とオートファジー阻害活性がPLA2阻害活性とは関連しないことを2020年度に明らかにした。分子モデリングをもとに設計、合成し、最も高活性で、かつPLA2に対する活性が低下した(選択性が約80倍向上した)誘導体を得ることに成功した。本化合物は、前立腺がん細胞を用いた検討において、飢餓培地もしくは抗がん剤存在下で培養することによって誘導したオートファジーを顕著に阻害し、その効果はリード化合物よりも強力であった。 ②Atg4B阻害剤の物性評価:開発したAtg4B阻害剤は親水性領域と長いアルキル鎖からなる疎水性領域で構成される両親媒性を示す。in vitro、細胞レベルでAtg4B阻害活性やオートファジー阻害活性を示す濃度域において、ミセルを形成しないことをピレン法を用いて示した。また、可逆的かつ競合的に阻害活性を示すことを分光光学的な速度論的解析によって明らかにし、構造活性相関によって親水性領域に含まれるカルボキシル基が阻害活性に重要であることを明らかにした。 ③アジュバント薬としての有効性評価:Atg4B阻害剤が、abirateroneに加えて、cabazitazelやenzalutamideなどの作用機序の異なる去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)治療薬に対しても作用増強効果を示すことをalamar blueアッセイやウエスタンブロット解析によって明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジーを特異的に制御できる化合物の開発に成功し、得られた新規Atg4B阻害剤のがんアジュバント薬としての有効性評価についても予定していた研究項目については予定通り評価が終了している。これらの研究成果は論文にまとめ、国際誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、新規Atg4B阻害剤のX線結晶構造解析を行い、阻害認識機構の解明を目指す。また、作用点の異なる他のオートファジー阻害剤との効果の比較を行うことで、がん細胞におけるオートファジーの意義やオートファジー阻害の有用性について評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、学会がすべてオンライン開催となり、学会参加費は予定通り計上したが、学会旅費を使用しなかったため。2022年度も学会旅費を使用する機会 がない場合は、消耗品費としての使用を予定している。
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