ケージドNOに関しては、テルルを含有するローダミン色素をアンテナ部位として用いた場合、NO放出効率が著しく向上することを前年度までに見出したが、ラットの大動脈切片の弛緩能を調べたところ、従来の化合物よりも効率よく血管弛緩を起こすことを確認した。また、テルル含有ローダミン以外にも、セレン、ゲルマニウムなど様々な元素を含有するローダミンを合成し、その構造活性相関を調べていく。 ケージド基に関しては、前年度までにシリコン含有フルオレセイン誘導体をアンテナ部位として用いることで590nmの光で制御できるケージド基として機能することを見出した。本年度は更なる長波長化を志向し、ホスファフルオレセインをアンテナ部位として用いた化合物を合成しようとしたが、合成が困難であり、まだ実現には至っていない。今後は、シリコン含有フルオレセイン誘導体を用いたケージド基の置換基変換による反応効率改善などを行っていく予定である。 セレンおよびテルル含有ローダミン誘導体を応用することで、チオール存在下で光に応答して急速に酸素を消費することを見出した。この反応を活用し、低酸素環境を光制御できる新たなプローブ分子を開発した。これを培養細胞系に用いると特定の細胞を低酸素環境に曝すことが可能であり、さらに低酸素応答カルシウムイオンチャネルの活性を光制御することに成功した。 このように、研究期間全体を通じて高効率なケージドNOを開発することに成功し、それをin vivoに応用することで血流を光制御できる"photovasodilator"として機能する分子を開発した。また、ケージド基に関しては基礎となる反応を開発し、in vivo応用に向けた長波長化も可能であることを確認した。さらに、低酸素を時空間制御できる新たなプローブ分子も研究期間中に見出した。このプローブ分子も、in vivo応用への展開に向け、開発を行っていく。
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