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2020 年度 実施状況報告書

グルコース輸送体を標的とするBNCT用ホウ素クラスターキャリア分子の創製

研究課題

研究課題/領域番号 20K05755
研究機関東京理科大学

研究代表者

田中 智博  東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 助教 (20711667)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードホウ素中性子線補足療法
研究実績の概要

ホウ素クラスター分子であるBSHが非共有結合によるキャリア分子との相互作用によって細胞内に移行するかどうかの予察研究として、カチオン性ポリマーの添加を試みた。その結果、BSHとカチオン性ポリマー(ポリエチレンイミンおよびポリリジン)は水中で静電的相互作用を引き起こし、nmスケールのナノ粒子を形成することを明らかにした。また、動的光散乱法(DLS法)を用いた解析によって、BSHとカチオン性ポリマーの比に応じてその粒子径が変化し、20-700 nmのナノ粒子が生成することを明らかとした。
次に、これらのナノ粒子の生物学的評価を行った。具体的には、その細胞毒性と細胞内取り込み量について評価した。細胞毒性について評価した結果、細胞毒性が高いことが知られているカチオン性ポリマー単独よりもナノ粒子の方が低い毒帝を示した。これは、相反する電荷を有するBSHが正電荷を中和するためと考えられる。
続いて、ナノ粒子の種々のがん細胞への取り込み量を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により評価した。その結果、BSH/カチオン性ポリマー(1/4)で構成されたナノ粒子ではBSH単独の12-20倍の取り込み量を示す事が明らかとなった。これは、細胞膜の負電荷と反発するBSHの電荷がカチオン性ポリマーにより中和されるために細胞に導入されやすくなったものと考えられた。
これらの結果から、BSHとカチオン性ポリマーは混合することでそれぞれが有する欠点を補完し、相乗効果を生み出すことを明らかとした。また、当初の目的であった非共有結合を介してBSHとキャリア分子を結合することで、細胞内取り込み量を向上させることが可能であることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

予察研究を想定して行ったBSH-カチオン性ポリマー複合体が想定以上の細胞内取り込み(BSH単独の12-20倍の取り込み量)を示したので、当初の分子設計とは異なるものの、目的であるB10を大量に細胞内に送達する技術の開発についてはすでに確立したものと考えている。また、本法を用いることで種々の細胞において高いB10取り込みが見られることを確認しているが、正常細胞に対しても高い取り込み量を示してしまったため、その点の改善について検討する必要が出てきた。そのため、本来の進行予定よりも遅れてしまっているのが現状である。

今後の研究の推進方策

当初の計画では非共有結合としてBSHのチオール基と金属イオンとの配位結合を利用しようと考えていたが、本研究においてBSHはカチオン性ポリマーと混合するだけでも静電的相互作用によりナノ粒子を形成し、B10原子の高い細胞内取り込みを実現できることが明らかとなった。今回発見したBSH含有ナノ粒子は二つの分子を混合するのみで調製することが可能であり、臨床においても簡便に使用できることが期待される。
そのため、その実用性についても加味したうえで、今後はBSHとカチオン性分子の相互作用を利用したB10送達システムについて検討を行っていくこととする。
上述の通り、実用化に向けての第一の課題はT/N比(腫瘍/正常組織)の向上である。今年度は、この点についてBSHまたはポリマー側に標的分子を修飾する等の手法を用いて検討していく予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Development of Metallosupramolecular Phosphatases Based on Combinatorial Self-Assembly of Metal Complexes and Organic Building Blocks for Catalytic Hydrolysis of Phosphate Monoesters2021

    • 著者名/発表者名
      S. Aoki, A. B. Rahman, Y. Hisamatsu, Y. Miyazawa, M. Zulkefeli, Y. Saga, and Tomohiro Tanaka
    • 雑誌名

      Results in Chemistry (a joint special issue with Inorganica Chimica Acta)

      巻: 3 ページ: 100133-

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Potential Anti-COVID-19 Agents, Cepharanthine and Nelfinavir, and Their Usage for Combination Treatment2021

    • 著者名/発表者名
      H. Ohashi, K. Watashi, T. Tanaka, S. Aoki 他26名
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 24 ページ: 102367-

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Crystal structures of fukutin-related protein (FKRP), a ribitol-phosphate transferase related to muscular dystrophy.2020

    • 著者名/発表者名
      N. Kuwabara, R. Imae, H. Manya, T. Tanaka, M. Mizuno, H. Tsumoto, M. Kanagawa, K. Kobayashi, T. Toda, T. Senda, T. Endo & R. Kato
    • 雑誌名

      NAT COMMUN

      巻: 11

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ホウ素中性子捕捉療法のための新規ポリアミン誘導体の開発2021

    • 著者名/発表者名
      〇上田大貴 1、田中智博 1、鈴木実 2、櫻井良憲 2、青木伸 1,3(1東京理大薬、2京大複合研、 3東京理大総合研究院)
    • 学会等名
      日本薬学会第141回年会
  • [学会発表] カチオン性ポリマーを用いたホウ素中性子線捕捉療法のためのBSH含有ナノ粒子の開発2021

    • 著者名/発表者名
      〇田中智博 1、上田大貴 1、鈴木実 2、櫻井良憲 2、青木伸 1,3(1東京理大薬、2京大複合研、 3東京理大総合研究院)
    • 学会等名
      日本薬学会第141回年会
  • [学会発表] ホウ素中性子捕捉療法を指向したBSH含有ナノ粒子の開発2020

    • 著者名/発表者名
      〇田中智博 1、上田大貴 1、鈴木実 2、櫻井良憲 2、青木伸 1,3(1東京理大薬、2京大複合研、 3東京理大総合研究院)
    • 学会等名
      京都大学複合原子力科学研究所 第55回学術講演会
  • [学会発表] ホウ素中性子捕捉療法のためのポリアミン誘導体の創製2020

    • 著者名/発表者名
      〇上田大貴 1、田中智博 1、鈴木実 2、櫻井良憲 2、青木伸 1,3(1東京理大薬、2京大複合研、 3東京理大総合研究院)
    • 学会等名
      京都大学複合原子力科学研究所 第55回学術講演会
  • [学会発表] ホウ素中性子線捕捉療法のための BSH 含有ナノ粒子の創製2020

    • 著者名/発表者名
      〇田中智博 1、上田大貴 1、鈴木実 2、櫻井良憲 2、青木伸 1,3(1東京理大薬、2京大複合研、 3東京理大総合研究院)
    • 学会等名
      第64回日本薬学会関東支部大会
  • [学会発表] BNCT 用ポリアミン誘導体の設計・合成および生物学的評価2020

    • 著者名/発表者名
      〇上田大貴 1、田中智博 1、鈴木実 2、櫻井良憲 2、青木伸 1,3(1東京理大薬、2京大複合研、 3東京理大総合研究院)
    • 学会等名
      第64回日本薬学会関東支部大会

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公開日: 2021-12-27  

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