研究課題/領域番号 |
20K05758
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
萩原 義徳 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (10628548)
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研究分担者 |
杉島 正一 久留米大学, 医学部, 准教授 (30379292)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光合成色素 / フィコビリン / 光遺伝学 / 鉄硫黄タンパク質 |
研究実績の概要 |
光は生物にとってエネルギー源や環境情報となり、色素を保持する光受容タンパク質がこれらの機能を担う。近年、動植物が有する光受容体を使って、神経刺激や遺伝子発現を光で制御する技術が見出され、オプトジェネティクス(光遺伝学)として注目が集まっている。しかし光駆動型タンパク質は、その種類によって吸収波長が異なり、任意の光を自在に用いることはできない。本研究では、ヘム代謝産物からビリン色素を合成する酵素に着目し、その結晶構造を基に活性残基を改変することで、紫外から近赤外までの各光色を受容するビリン色素を生み出す酵素ライブラリを構築する。動物や植物、細菌が有するビリン色素をデザインし、光センサータンパク質と組み合わせることにより、任意の光色を複合的に用いたマルチタスク制御のオプトジェネティクスの促進を目指している。 フィコシアノビリンはクロロフィルが吸収できない橙-赤色光を吸収するビリン色素であり、ヘム代謝産物であるビリベルジンからビリン還元酵素PcyAによる還元を受けて合成される。この還元反応に用いられる電子は、Ferredoxinと呼ばれるタンパク質から受け取っている。Ferredoxinは内部に鉄-硫黄クラスターを持つ鉄硫黄タンパク質であり、電子伝達体として機能する。シアノバクテリア由来のferredoxin遺伝子には、類似の遺伝子が6種類存在していることがゲノム解析から明らかとなった。しかし、これらの機能や立体構造は明らかになっておらず、PcyAとの相互作用に関しても不明であるため、6種類のFerredoxinホモログタンパク質の機能、構造の解析を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シアノバクテリア由来ferredoxinホモログ遺伝子の発現系構築では大幅な進展があったが、PcyAの活性ポケット周辺のアミノ酸残基変異体作製と、その酵素反応生成物の評価に遅れがみられる。今回、外部機関への移動が必要となっていた実験および分析に移動制限がかかってしまったことが大きな理由となるが、状況を鑑みて、これまでに作製済みの変異体酵素と基質ビリベルジンを反応させ、生成色素の吸収スペクトルやその分子量を測定する。また、生成色素と光センサータンパク質との結合能も、大腸菌を用いた共発現系で評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、残りのferredoxinホモログ発現ベクターの構築を引き続き進めるとともに、今回構築に成功したものについては、タンパク質発現および精製を行い、ホモログタンパク質の機能や立体構造の解析を目指す。また、PcyAに関してはこれまでに作製済みの変異体酵素と基質ビリベルジンを反応させ、生成色素の吸収スペクトルやその分子量を測定する。さらに、生成色素と光センサータンパク質との結合能も、大腸菌を用いた共発現系で評価したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に伴い外部機関での実験が行えず、研究の進行計画・内容が変わったため。次年度も状況を鑑みて、適切に使用する。
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