研究課題
昨年度はアルミニウム(Al)および鉄(Fe)処理を施した植物サンプルに含まれる元素をバッファーで抽出し、分子量で分画した後に各元素濃度を測定することを試みた。しかし元素による抽出効率の違いが大きく、分画時に吸着による損失が生じた。そこで、単一のバッファーによる抽出液を分画するのではなく、異なるバッファーで抽出される成分の元素プロファイルに対する処理の影響を調査した。+Al処理と+Fe処理をメラストーマに対して行い、処理後の各部位を中性あるいは酸性バッファーで抽出し、抽出液をICP-MSで測定した。また、サンプルを湿式分解し全濃度についても測定した。その結果、抽出バッファーの違いで傾向が異なる元素が認められた。例えば、若葉でのカルシウムは+Al処理で中性バッファーではコントロールと比べて濃度が著しく低下した一方、酸性バッファーでは大きく上昇した。この傾向は+Fe処理では認められず+Al特有の現象だった。一方、若葉のモリブデン濃度については+Al処理と+Fe処理の両方で酸性バッファーでの濃度が上昇しており、AlとFeの影響は類似した。他の元素においても特徴的な結果は複数認められ、部位間による傾向の違いも見られた。来年度はこれらについても解析を進めたい。それぞれの抽出液における分子量別元素プロファイリングについても検討する。次に、窒素、リン、カリウムのいずれかを欠乏させた圃場および全て施肥した圃場で栽培した異なる4植物種の根圏および非根圏土壌における抽出性元素濃度の差異を水抽出と0.1 M塩酸抽出でそれぞれ調べた。その結果、水抽出と塩酸抽出では多くの元素で傾向が異なり、根圏において同様の挙動を示す元素グループが複数確認された。種間においても傾向の違いは見られ、それぞれの養分元素に対する植物側の元素集積プロファイルとの比較から植物根の元素可給化能の違いを説明できる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
植物体については異なる抽出方法によるプロファイルの違いを比較することができた。それぞれの抽出法による抽出液を分画することで、より多くの情報を得ることができる見通しがたった。土壌については、異なる抽出法間で元素プロファイルが大きく異なり、種間や処理間での違いも見られた。植物側の元素プロファイルも含めた解析から、植物種間の根の元素可給化能の違いを説明できそうである。
植物については異なるバッファーによる抽出液の分子量別元素プロファイリングを試みる。また、他の植物種やAl/Fe処理以外の栽培処理におけるデータも取り、解析したい。土壌については異なる抽出法で根圏、非根圏土壌から得られた元素データと植物体の元素データを統合した解析を行いたい。
想定していた植物抽出試料の分画実験ができず、そのための消耗品への支出がなかった。来年度は分画実験をすすめる予定であり、それに関する支出は増える予定である。また、新型コロナウイルスの影響により、打合せや学会現地参加に必要な旅費等経費の支出がなかったことも影響した。今年度は多くの学会は対面で開催される予定であり、積極的に参加し発表や情報収集を行いたい。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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