研究課題/領域番号 |
20K05764
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
森田 明雄 静岡大学, 農学部, 教授 (20324337)
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研究分担者 |
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 准教授 (90580647)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チャ / アルミニウム / カフェイン |
研究実績の概要 |
チャはアルミニウム (Al) に応答してアルカロイドの一種であるカフェインを根から放出するが,Al処理に応答した放出パターンを示すことから,Al耐性機構との関連性が示唆されるが,その意味や役割については未解明である.そこで,チャの生育に及ぼすカフェイン処理の影響について調査するため,茶の主要品種「やぶきた」一年生挿し木苗を,0,0.01,0.1,0.2,0.5または1.0 mMのカフェインを含むチャ標準水耕液 (pH 4.2) で約50日栽培した.なお,対照区としてカフェイン1.0 mMに含まれる窒素と等量のNH4NO3処理区を設け,処理溶液は1週間毎に更新した.処理後の植物体を新葉,成葉,新茎,古茎,白色根,褐色根に分けて収穫し,部位ごとの生育量を調査し,HPLCを用いてカフェイン,カテキン類,遊離アミノ酸含量を測定した結果,カフェイン処理区では,0.01 mM区で白色根の生育が増加する傾向がみられ,0.5 mM以上では,根のカフェイン含量の増加とともに白色根の褐変化および生育量減少などの過剰害が認められた.このことから,チャにおける根の伸長促進は,根端のカロース集積がカフェインにより抑制された可能性が示唆された.無菌苗については,現在実験植物体の調整を実施しており,スクリーニングを進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水耕栽培によるカフェインの応答性については,当初の予想通りの結果を得ることができた.植物体のサイズが大きいため,また,ガラス温室での試験を実施しているため年間を通じた試験が困難ではあるが,無菌植物体の調整を推進することにより,実験室内での試験が並行してできるように進めている.年次間差による影響を調査するため,複数年の試験結果が必要であるが,研究の方向性は定まってきた.遺伝子組換え体の作出については試行錯誤が続いているが,新たな知見の集積はできている.コロナウイルスの影響を受け,一部の研究活動は制限されているが,全体的には概ね順調に進捗していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
①水耕法または無菌苗によるカフェイン添加試験 水耕系による試験は微生物による影響を排除することが難しいため,現在調整中の無菌植物体を用いた試験により,金属特異性 (銅やカドミウム等の根圏毒性を示す金属イオンに対する応答性) やAl濃度依存性 (処理濃度との関連性) を調査し,根の生育量とカフェインや有機酸等の根圏への放出物質との関係性について考察する. ②シグナル伝達経路の解明 ①の実験と平行して,トランスクリプトーム解析およびカフェイン合成変異体の作出といった分子生物学的試験を推進する.カフェイン処理による生育への影響についても引き続き調査し,その再現性の確認,特に根端におけるカロースと根伸長との関連性を調査する.カロースについては組織的な蓄積部位,合成の場やそのタイミングについて組織染色法やRNA-seqを用いたトランスクリプトーム解析を応用し,カフェインの放出や生合成,根伸長等に関連する相関ネットワークを明らかにする.
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