研究課題/領域番号 |
20K05765
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
水野 隆文 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50346003)
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研究分担者 |
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
橋本 篤 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (40242937)
村井 良徳 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (30581847)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛍光エックス線分析 / 植物標本 / 元素集積データベース / イオノーム |
研究実績の概要 |
科・属というレベルで植物の元素集積をプロファイル化し,傾向を把握することは,そのグループに属する植物の栄養特性の把握や過剰症や欠乏症の推定,もしくは様々なレベルの栄養性や化学性を示す土壌への適応戦略の理解に役立つと考えられた。本課題研究は2020年に開始され,コロナ禍によって標本の収集が困難であった初年度を除き,おおよそ年間600-700標本,最終年度までに2,500を超える標本について蛍光エックス線分析計(XRF)による非破壊の元素分析を実施した。蓄積したデータを統計的に解析することで,新しい植物栄養学的知見を多く獲得することができた。具体的には(1)日本国土の30%を占める火山灰土(黒ボク土)とその他の土壌では,黒ボク土の野生植物のイオウ含有量が有意に高く,また施肥を受けない野生植物であっても欠乏症レベル(1,000mg/kg以下)の個体はほとんど存在しなかった。また,植物体内のリンとイオウ濃度は正の相関があることも示された。(2)酸性土壌が多い日本において,石灰岩土壌と蛇紋岩土壌(超塩基性土壌)に分布する植物の特性を調査した。石灰岩土壌の植物であっても,鉄,亜鉛含有量は必ずしも一般土壌と比べ低いわけではなかったが,採取地域毎のバラツキが大きい結果となった。蛇紋岩土壌は典型的な貧栄養土壌であるが,カリウムについては一般土壌に遜色なく獲得する傾向が認められた。一般土壌や石灰岩土壌ではカリウムとリンに正の相関が認められたが,蛇紋岩土壌ではこの関係性が失われ,代わりにカリウムとイオウに高い正の相関が認められた。これは蛇紋岩土壌の極端に低いリン濃度が関連すると考えられた。(3)これまで知られていたコシアブラに加え,新たに複数のモチノキ属樹木にマンガン超集積性が確認されたが,その元素集積パターンはコシアブラと違う傾向が認められた。
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