研究課題/領域番号 |
20K05766
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
森塚 直樹 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (10554975)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | カリウム / 施肥試験 / 水田 / 飼料イネ / 土壌肥沃度 |
研究実績の概要 |
R2年度には、主に以下の知見が得られた。 1)飼料イネの連作をやめて作付を食用米に戻すと、土壌のカリウム肥沃度はどのように変化するかを評価するために、2020年5月上旬に定点水田圃場(8圃場、39地点)から表層土壌試料を採取し、カリウム含量を形態別に測定した。その結果、飼料イネから食用米に作付を戻した2筆の水田の土壌交換態K含量は、2筆の飼料イネ連作水田よりも高い値を示した。熱硝酸可溶性非交換態Kは、作付形態間の差を検知できなかった。テトラフェニルホウ酸ナトリウム可溶性非交換態Kは、土壌の母材に由来すると思われるカリウム肥沃度の圃場間差を検知するのに有効であった。 2)テトラフェニルホウ酸ナトリウムによって抽出されるK沈殿量からテトラフェニルホウ酸ナトリウム可溶性K含量を目視で簡易推定できるかどうかを評価した。その結果、テトラフェニルホウ酸ナトリウム可溶性Kが高い値を示した圃場の試料はそれ以外の試料よりも48時間後のK沈殿量が大きい値を示した。テトラフェニルホウ酸ナトリウム可溶性K含量を大雑把に推定できる可能性が示唆された。 3)定点圃場に流入する灌漑水を定期的に採取分析した結果、灌漑水のK濃度は平均3.34 mg L-1であり、育苗期あるいは中干しから落水までの期間は移植から中干しまでの期間よりも高い値を示した。さらに灌漑水のK濃度はSi濃度(平均11.3 mgSi L-1)と有意な正の相関を示し、全N濃度(平均0.62 mgN L-1)や全P濃度(平均0.05 mgP L-1)とは有意な相関を示さなかった。圃場の灌漑水のKとSi濃度は、国内の河川水の平均値よりも高い値であることが判明した。Si濃度が比較的高い値を示したのは、御船川源流である阿蘇外輪山に黒ボク土が広く分布するためであると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の野外調査や室内実験に加えて、土壌帯磁率を規定している要因に関してスケール横断的な解釈を行い、論文に取りまとめた。
|
今後の研究の推進方策 |
1)2021年11月から8筆の定点調査圃場から採取した作土を用いて、水稲の裏作のコムギの生育とカリウム吸収に及ぼすカリウム施用の影響をポット試験と圃場試験によって評価し、カリウムの追肥効果を検証している。 2)隔年で同一地点から試料を採取してきた定点調査圃場(8筆、39地点)に関しては、2014年作から2017年作までは食用米と飼料イネがそれぞれ4筆の圃場で栽培されていたが、2018年に減反政策が廃止されたことを受けて、2018年作から1圃場、2019年作から1圃場、2021年作から1圃場で食用米が栽培されるようになった。2020年からは定点水田圃場の表層土壌試料を毎年同時期に採取し、飼料イネの連作をやめて作付を食用米に戻したときの土壌肥沃度の変化を少なくとも2022年まで評価する。 3)これまでの研究から作土以深のKが水稲やコムギに供給され、それによって作土のKが補充されていた可能性が示唆されたため、2022年5月には表層土壌試料に加えて次表層土壌試料も採取し、カリウム含量を形態別に測定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に生じた次年度使用額(4000円弱)は、2021年度の物品費に利用する予定である。
|