研究実績の概要 |
R3年度には、主に以下の知見が得られた。
1)飼料イネの連作をやめて作付を食用米に戻すと、土壌のカリウム肥沃度はどのように変化するかを評価するために、2020年と2021年の5月上旬に定点水田圃場(8圃場、39地点)から表層土壌試料を採取し、カリウム含量を形態別に測定した。その結果、両年ともに飼料イネから食用米に作付を戻した2筆の水田の土壌交換態K含量は、2筆の飼料イネ連作水田よりも高い値を示した。 2)テトラフェニルホウ酸ナトリウム(NaBPh4)によって抽出されるK沈殿量からNaBPh4可溶性K含量を目視で簡易推定できるかどうかを評価した。風乾細土1 g とNaBPh4粉末 0.41 gを15 mL容遠沈管に入れ、高濃度の塩化ナトリウム溶液(1.7 mol L-1 NaCl、0.01 mol L-1 EDTA-2Na)を6 mL添加後によく混和した。その後、25℃で静置し、6, 24, 48, 72, 96時間後に遠沈管の目盛で土壌体積を目測した。対照区としてNaBPh4無添加区も設置した。その結果、雲母由来鉱物のみでNaBPh4添加区と無添加区の体積差が静置時間とともに増加した。土壌の場合、静置時間とともに増加した体積差は48時間後にほぼ安定化した。この48時間後の体積差とNaBPh4可溶性K含量の決定係数は全土壌試料で0.77となり、NaBPh4可溶性K含量を大まかに推定できた。 3)2020年5月に採取した表層土壌を用いて、2020年11月から翌年3月までK施用量を段階的に変えたコムギのポット試験を行った。その結果、交換態カリウム含量が低い飼料イネ連作圃場ではK無施用区でコムギの生育が制限される場合があったが、全体としては、初期土壌pHとコムギの地上部乾物重は正の相関を示した。
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