研究課題/領域番号 |
20K05772
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐々木 孝行 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (60362985)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ALMT輸送体 / 気孔 / リンゴ酸 / シロイヌナズナ / トマト |
研究実績の概要 |
植物に特異的なALMTファミリーに分類されるリンゴ酸輸送体は,植物の多様な生理現象に関与する.気孔を構成する孔辺細胞にもALMTリンゴ酸輸送体は存在し,気孔閉口に関与するが,分子生物学的な知見は主にシロイヌナズナから得られており,その他の植物におけるALMT輸送体の気孔開度への関与や,基質輸送メカニズムなどがシロイヌナズナと同様か,その詳細は明らかではない.そこで,トマトの気孔で発現するALMT遺伝子を同定し,さらに,電気生理学的手法により,その輸送特性や活性化機構について解析している. 本年度は,トマトALMTの関与する気孔閉口について,その制御機構を解析した.トマト(Micro-Tom品種)を用いて,気孔ALMT遺伝子を発現抑制した形質転換体の作出を行い,遺伝子発現が野生株の1/10に抑制された2つのRNAi系統を得た.これらRNAi系統を用いてトマトの気孔閉口を調べた結果,シロイヌナズナ等で一般的にみられるアブシジン酸誘導性の気孔閉口は,野生株とRNAi系統とで同程度であった.しかし,外液のリンゴ酸濃度上昇に依存した気孔閉口は,野生株と比較してRNAi系統では抑えられた.電気生理学的な解析結果から,トマトの気孔ALMTの輸送機能は,外液リンゴ酸により活性化されることが解っており,植物でみられた気孔閉口への関与に類似性がみられた. 従って,トマトとシロイヌナズナの気孔ALMT輸送体について,アポプラスト側のリンゴ酸濃度上昇による気孔閉口への関与については,植物種が異なっても類似性を示すが,アブシジン酸シグナル伝達経路を介した気孔閉口への関与は,植物種間で異なることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はトマトの気孔ALMT遺伝子の発現抑制体を用いて,気孔開度を野生株と比較解析し,気孔閉口への関与を証明した.しかし,環境ストレスからのシグナル伝達機構は,ALMTが関わる気孔閉口において,トマトとシロイヌナズナで異なることが示唆されたため,トマトのALMT誘導性気孔閉口の詳細な生理的メカニズムの解明も今後の課題である. さらに,トマト,シロイヌナズナの気孔ALMTに共通する,リンゴ酸輸送に関与するC末端側の機能部位の研究も進めており,重要なアミノ酸配列の同定を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
トマトについては,RNAiによる発現抑制系統を用いた解析を先行して行っているが,ゲノム編集技術による気孔ALMT欠損変異系統の作出も進めている.現在,遺伝子変異が生じた個体の選抜を進めている. さらに,電気生理学的手法を用いることで,気孔ALMTを活性化する有機酸種の同定も進めている.また,トマトとシロイヌナズナの気孔ALMT輸送体のC末端にある,リンゴ酸輸送特性を制御するアミノ酸の同定と,そのメカニズムの解明にも着手している.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は予算額の関係から,予定していた非常勤職員の雇用を見合わせた.2021年度に,先の繰り越し分と当該年度の経費により非常勤職員を雇用している.
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