研究課題/領域番号 |
20K05774
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
望月 進 香川大学, 農学部, 助教 (40567020)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 希少糖 / リン酸糖 / ホスホグルコースイソメラーゼ / グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ / 活性酸素 / 細胞死 / 植物 / イネ |
研究実績の概要 |
本申請研究は、モデル植物のイネやシロイヌナズナを用いて「希少糖D-プシコースやD-アロースが植物細胞へのレドックス状態にどのように作用するのか」「植物の糖代謝と細胞のレドックス制御はどのように関連しているか」を解明することを目的としている。本年度は、各小課題のうちの(1)「リン酸糖異性化酵素」の解析で、イネのPGI(ホスホグルコースイソメラーゼ)酵素(OsPGI1およびOsPGI2)がP6P(D-プシコース6リン酸)-A6P(D-アロース6リン酸)変換能を持つことを明らかにし、この変換酵素によるA6P生成が両希少糖の作用における合流点であることが示唆する結果を得た。そこでこれらの遺伝子を過剰発現させたイネの表現型を確認するために、形質転換イネの作出を行った。また、(2)「糖代謝酵素G6PDH(グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ)」の解析で、不安定な酵素であるイネOsG6PDHのうち、A6P作用の主要なターゲット酵素と予想されているOsG6PDH1が、A6PやD-ガラクトース6リン酸、D-グルコース1,6リン酸の前処理によって、40℃の熱処理による熱失活を受けにくくなることを示し、この酵素の安定化がD-アロース処理した植物中でのG6PDH活性の持続的維持に関与していることが予想される結果を得た。この特定のリン酸化糖によるG6PDH活性の安定化はこれまでに確認したOsG6PDH1-3のうち、OsG6PDH1でのみ観察され、また、イネのOsG6PDH1欠損変異体ではD-グルコースやD-アロースによるG6PDH総活性の上昇が見られないことから、これまでの想定通りにOsG6PDH1が希少糖感受性決定因子であると結論づけることができた。しかしながらこのメカニズムは不明のままであることから、各種のアミノ酸変異型OsG6PDH1の作製を開始し、この安定化に関与する因子の解析を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究申請時に提示した各小課題について、(1)P6P-A6P間の異性化反応を担う酵素がPGIであること、(2)熱処理によって擬似的に不安定化させたOsG6PDH1の酵素活性をA6P処理が維持(安定化)させる作用があったことから、A6PのG6PDH酵素に対する作用メカニズムはOsG6PDH1に対する酵素安定化であること、を示すなど、当初の予定通りに進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、「リン酸糖異性化酵素」の解析では、形質転換イネを用いて表現型の解析を行うとともに、植物内動態を明らかにする予定である。また、「糖代謝酵素G6PDH」の解析では、OsG6PDH1の各種変異型酵素および葉緑体型OsG6PDH3-5の組換え酵素を取得し、本年度の解析結果から示唆されたA6Pを含むリン酸糖による酵素安定化に関係するアミノ酸残基の特定を目指す。さらに、得られた情報を基に、変異型G6PDH遺伝子をOsG6PDH1の欠損変異体に導入し、その表現型を観察する。特に、活性酸素種検出試薬や蛍光プローブなどを用いた活性酸素種発生蓄積状況(レドックス状態)の検証を行うことにより、D-アロースおよびD-プシコースの作用メカニズムのうち、糖リン酸化酵素による希少糖のリン酸化後の希少糖感受性/耐性を決定づける因子(代謝産物とその標的酵素)を明らかにし、糖代謝と活性酸素種生成/消去を伴う植物細胞の酸化還元(レドックス)制御機構についての新たな知見を得ることを目指す。
|