研究課題
本研究は、植物に対する希少糖D-アロースとD-アルロース(D-プシコース)の作用メカニズム解析を通じて、糖代謝と希少糖による植物への耐病性付与やレドックス状態制御の関連性の解明を目指した。これらの希少糖の作用にはD-アロース6リン酸(A6P)の生成が必須であることが明らかになっていたが、(1)D-アルロース処理時のD-アルロース6リン酸ーA6P間の変換と(2)A6Pの直接的な作用メカニズムが未知のままであった。(1)についてはこの変換を担う酵素がホスホグルコースイソメラーゼ(イネOsPGI1/2)であることを組換え酵素や形質転換植物を用いた実験から明らかにし、最終年度にはこれらの酵素の点変異酵素を作製し、その基質特異性に関与するアミノ酸残基を明らかにした。また、(2)についてはこれまでの研究から示唆されていた標的候補酵素グルコース6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)がA6Pの標的酵素であることを改めて示し、A6Pを含むいくつかのリン酸糖が複数あるG6PDHのうちのOsG6PDH1を特異的に安定化することによってG6PDH活性を維持し、これがアロース処理イネでの活性酸素種増加に繋がることを見出した。さらにはOsG6PDH1特異的に存在するN末端領域がA6Pによる安定化には関与しないもの活性維持に必須であることを明らかにし、また、OsG6PDH1の活性発現への寄与が期待されるグリコーゲンシンターゼOsSK11, 12, 13, 41を単離し、これらのうちの少なくともOsSK41がD-アロース処理時の活性酸素増加に必須なOsRbohCと直接的に相互作用することを明らかにするなど、他のストレス(塩ストレスなど)でも示唆されているG6PDHによるレドックス制御が、リン酸糖によるイネのOsG6PDH1などの細胞質型キー酵素の安定化によることを示唆するデータを得た。
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すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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