研究課題/領域番号 |
20K05778
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
石川 覚 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (40354005)
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研究分担者 |
安部 匡 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (70729201)
倉俣 正人 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主任研究員 (80826991)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヒ素 / イネ / ファイトケラチン / カドミウム / ゲノム編集 / 食の安全 |
研究実績の概要 |
UPLC/MS/MSによるファイトケラチン(PCs)分析方法について標準品を用いて検討を行った結果、1検体7分でγEC、グルタチオン、PC2-4を分離し測定できる分離用カラム・溶離液等の条件と、各化合物のイオン化およびコリジョン電圧を選定した。一般的なPCs抽出液に用いられていた還元性のキレート剤DTPAはγECと分子量が同じでUPLCでの保持時間も近かったため、UPLC/MS/MS分析用の抽出溶媒には適さないことが分かった。そこで新たな還元剤の検討を行った結果、TCEP塩酸塩を選定した。本還元剤を用いた抽出液の予備実験段階ではあるが、幼植物地上部からのPCs抽出効率が向上するデータを得ることができた。 エラープローンPCRによってランダムに変異を導入したファイトケラチン合成酵素(PCS)の活性を簡易評価するため、酵母細胞の生育(生死)を指標にできる遺伝子組み換え酵母株を作製した。元の酵母株はヒ素の排出トランスポーター遺伝子が欠損した遺伝子破壊株(Δacr3)であり、そこにイネのケイ酸トランスポーター(OsLsi1)とシロイヌナズナ由来のAs-PCsトランスポーター(AtABCC2)を共に染色体組み込み型ベクターで導入した。本菌株はOsLsi1によって亜ヒ酸の吸収がより高まるため、AtABCC2と協働できない改変PCS遺伝子は淘汰される仕組みである。過剰なPCSタンパク発現によるヒ素耐性(偽陽性)を排除するため、改変PCS遺伝子導入用に低発現プロモーター(pCYC1)を組み込んだベクター構築も行った。以上により、効率的なPCS活性評価システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒ素・カドミウムによって合成が誘導されるファイトケラチンやその前駆物質をUPLC/MS/MSによって分離し、しかも1検体7分で測定できるシステムを構築できた。また、ヒ素吸収・耐性関連の遺伝子を導入した組換え酵母を作製することで、PCS活性を迅速かつ効率的に評価できるシステムを構築した。以上により、研究はほぼ順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
イネの野生株(品種:コシヒカリ)とOsPCS1やOsPCS2が欠損した株から、TCEP塩酸塩による新たな抽出法によってファイトケラチン等チオール化合物を抽出し、各組織におけるそれら化合物の合成量を測定する。 エラープローンPCR等によって変異が生じたPCS遺伝子をヒ素耐性評価用組換え酵母に導入し、ヒ素添加培地による酵母細胞の生死から定性的にPCS活性を評価する。さらに生存したクローンはPC測定による定量的な評価も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響があり、出張ができなかったり、非常勤職員の雇用が予定よりも短くなったりしたため。ファイトケラチンやヒ素・カドミウム等の分析が多検体になるため、それに必要な消耗品や実験器具を購入する。
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