研究課題/領域番号 |
20K05780
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
垰 和之 東京大学, アイソトープ総合センター, 助教 (00211996)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | リポ蛋白質 / 細菌 |
研究実績の概要 |
大腸菌などグラム陰性細菌のリポ蛋白質の多くは、Lolシステムにより外膜に輸送され外膜内葉に脂質部分をアンカーする。従来、リポ蛋白質はそのまま外膜内葉にとどまり、蛋白質部分はペリプラズム空間に面するかたちで存在すると考えられてきた。しかしながら、最近の研究からは外膜リポ蛋白質のなかには細胞表面にその一部分を露出しているものが存在することが明らかになってきた。 本研究は(1)大腸菌外膜リポ蛋白質群が内膜から遊離して外膜へ輸送され、(2)その一部のものが細胞表面に露出する仕組みについて明らかにすることを目的としている。 昨年度に引き続き、LolCDEのLolC及びLolEサブユニットそれぞれのTM1,2へ網羅的に光架橋性アミノ酸(ベンゾイルフェニルアラニン,pBpa)を導入した誘導体を用いて、生細胞内での外膜リポ蛋白質PalとLolCDEの相互作用を解析した。その結果、pBpaを導入したいくつかの部位でPalとの特異的な架橋が観察された。これらの部位は、最近、3つのグループから独立に報告されたLolCDEと外膜リポ蛋白質複合体のクライオ電顕構造から予想される部位と概ね一致した。また、LolC-LolE間での架橋を形成するpBpa導入部位も幾つか同定できている。これらの架橋形成は、in vivo 及びin vitroでのLolCDEの反応サイクルにおける構造変化を検出する指標として有用であると考えられる。 外膜リポ蛋白質の中で細胞表層にその一部を露出するものを同定することも引続き行なっている。生細胞外からのビオチン化試薬との反応性を指標に細胞表層への輸送を検出することを試みている。ビオチン化試薬の種類、様々な処理条件について検討を加え、存在部位を正しく評価することのできる条件を確立しつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生きた細胞外からの蛋白質分解酵素、ビオチン化試薬、抗体等への反応性を指標にして、蛋白質の細胞外露出部位・トポロジー等を正確に解析する条件設定に手間取っており、この部分の解析が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
LolCDEによる外膜リポ蛋白質の内膜からの離脱機構の解析を、光架橋性アミノ酸を導入したLolCDEを用いた試験管内実験系により行う。特に、最近報告されたLolCDE-リポ蛋白質複合体のクライオ電顕構造に基づいて、外膜リポ蛋白質特異的な基質選択の機構についての解析を行う。また、細胞表層へ露出する新規リポ蛋白質の同定・トポロジー解析も引続き試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画初年度からの新型コロナウイルスによる活動制限のため、全体的に研究計画の進行が遅れていること、及び、一部の実験で想定より進行が遅れているため次年度使用額が生じた。当該助成金は、引続き当初予定していた実験を行うために使用する。
|