研究課題/領域番号 |
20K05781
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
手塚 武揚 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80646414)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 希少放線菌 / 胞子嚢 / 休眠細胞 / 覚醒 / 胞子 / 遊走子 / Clpプロテアーゼ |
研究実績の概要 |
本研究は、希少放線菌Actinoplanes missouriensisが形成する胞子嚢が水に浸されると開裂し、内部の胞子を外界に放出する現象を材料として、休眠状態の細胞が外部環境の変化を感知して覚醒し、栄養増殖に到る分子機構の解明を目的としている。具体的には、Chaperonin-linked protease (Clp) 複合体のATPaseサブユニットと予想されるClpX、およびプロテアーゼサブユニットと予想される4つのClpP (ClpP1-4) に注目して解析を進めている。これまでの研究の結果、ClpXをコードする遺伝子の破壊株では胞子嚢の形成と開裂に異常が見られる一方、ClpP3をコードする遺伝子の破壊株では胞子嚢を正常に形成するものの開裂条件において胞子嚢開裂が進行しないことが判明している。clpX遺伝子は2つの転写開始点を持ち、このうち1つは主要シグマ因子により転写される一方、もう一方の転写開始点からの転写は胞子嚢形成と開裂に関わる遺伝子群を幅広く制御するシグマ因子FliAにより開始されることが予想されていた。そこで、野生株とfliA破壊株の間でclpX遺伝子の転写量を比較したところ、予想通りfliA破壊株において胞子嚢形成時のclpX遺伝子の転写量が大幅に減少していた。ClpXと複合体を形成するプロテアーゼサブユニットの同定については、ClpXおよびClpP1-4のウエスタンブロット解析を行い予備検討を進めた。胞子嚢の開裂時にClpプロテアーゼ複合体により分解される基質タンパク質の同定については、野生株とclpP3破壊株から細胞質タンパク質を精製して二次元電気泳動法によりプロテオーム比較解析を行ったが、基質タンパク質の候補を検出することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
clpX遺伝子の転写解析については、fliA破壊株においてclpXの転写量が大幅に減少していることを示すことができた。ClpXと複合体を形成するプロテアーゼサブユニットの同定については、Hisタグを付加したClpX (ClpX-His) を発現する変異株を作製し、抗His抗体により細胞抽出液中からClpX-Hisの検出に成功した。また、ClpP1-4の組換えタンパク質を抗原とする抗体を作製し、野生株の細胞抽出液よりClpP1-4の検出を試みた結果、ClpP1およびClpP2については検出に成功した。今後は、研究の推進方策に沿って、さらに研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
clpX遺伝子の転写解析については、主要シグマ因子とシグマ因子FliAの組換えタンパク質を用いたin vitro転写解析により、clpXの2つの転写開始点をこれらのシグマ因子が認識することを示す。ClpXと複合体を形成するプロテアーゼサブユニットの同定については、発現量が少ないと考えられるClpP3の検出条件の検討を行う。その後、Hisタグタンパク質精製用レジンを用いた共精製とウエスタンブロット解析により、ClpX-Hisと相互作用するClpPタンパク質の検出を試みる。Clpプロテアーゼの基質タンパク質の同定については、これまでに得られているclpX破壊株、clpP1破壊株、clpP4破壊株についても、野生株と二次元電気泳動法による比較プロテオーム解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍により研究活動が大幅に制限された中での研究計画の実施となり、物品費・旅費とも支出額が使用計画を下回った。来年度も活動に制限は残るものの、研究計画の実施を進め、次年度使用額を合わせて効率的な使用を行う。
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