有馬温泉源泉土壌から単離された好熱性細菌Meiothermus ruber H328株が持つトリ羽毛分解能を上げるべく、トリ羽毛分解に有効なprotein disulfide oxidoreductase (pdo7)を、これまで同株で確認されて来た膜小胞への提示を中心に行なった。この目的を達成するために、膜小胞 の細胞表層に多量に存在する S-layer protein (SlpA)(MrH_2961) を足場に、ケラチン分解に関与するが、膜小胞上での局在が確認できていない protein oxidoreductase (Pdo7)(MrH_1589) を融合させた株 (SP株 ) を作成し、膜小胞表面への提示を試みた。細胞表層タンパク質である SlpAを足場タンパク質としてPdo7を融合させた SlpA-Pdo7融合株 SP株 )を相同組換えにより 作成 した。作成した SP株は 55°C、60°Cでの 培養 において、どちらも WT株 と同様に 問題なく増殖した。次に膜小胞画分に対する SDS-PAGEにおいて、WT株と SP株 のSlpAバンド を比較すると、SP株 において SlpAの バンドが Pdo7の分子量(25 kDa)分、高分子側にシフトしていることが判った。膜小胞画分を Pdo7抗体を用いたWestern blotting解析に供した結果、 SP株で SlpAと融合した位置でのPdo7の 存在を確認した。これらの結果から、作成したSP株において、SlpAに Pdo7が融合されていることが判った。培養における回転数を180 rpmから190 rpmに上げると、酵素タンパク質の 表面提示による 膜小胞の質的改良を達成 することができた。別途、トリ羽毛分解物のバイオポリマーとしての機能を調べたところ、利用性が高まっていることが確認された。
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