DNA損傷ストレスが出芽酵母のリボソームに与える影響を調査するため、DNA損傷剤を用いた解析を行った結果、DNA損傷ストレスはリボソームの翻訳活性を低下させることが分かった。翻訳活性の低下がリボソームのタンパク質構成変化に依存するのかを、二次元電気泳動によるプロテオーム解析にて検証した。検出されたタンパク質スポットのMALDI-TOF/MSによる解析から、DNAストレス条件下では、パラログタンパク質と入れ替わるリボソームタンパク質が存在する可能性が示された。 上記の解析とは別に、出芽酵母の遺伝子破壊株ライブラリーを用いてリボソームタンパク質欠損株のDNA損傷剤感受性を調査した結果、L42Bを含むいくつかのリボソームタンパク質欠損株で影響が認められた。これらの欠損株についてさらに解析を進めたところ、パラログタンパク質遺伝子が存在する染色体の重複(異数化)が起きていたこと、それによって増殖速度の回復とDNA損傷剤への感受性が高まることが分かった。本来、第14番染色体に存在するL42A遺伝子を、L42B遺伝子欠損株の他の15種の染色体に移植した場合においても、同様に異数化細胞が出現したことから、パラログ遺伝子を含むすべてのリボソームタンパク質で起こり得る現象であると言える。さらに、二倍体細胞を用いて染色体分配の精度を調査した結果、いくつかのリボソームタンパク質遺伝子欠損株で染色体分配異常が認められた。染色体分配異常を起こすメカニズムは解明できていないが、rRNAやtRNAの転写と染色体分配の関係を示す報告があることから、リボソームタンパク質遺伝子欠損によるリボソーム合成量の低下が一因であると考えている。
|