研究課題
昨年度は、フラボノイド応答性プロモーター (PqdoI) とT7 RNAポリメラーゼ遺伝子 (T7 pol) との連結を枯草菌染色体に組み込み、T7プロモーター制御下の目的遺伝子をもつプラスミドを導入して、フラボノイド誘導型T7発現系を作製した。今年度は、T7 polの制御を担うPqdoIに関して、コアプロモーター、プロモーター上流域、およびSD配列を改良し、誘導条件での発現量の向上を試みた。改良型T7 pol制御領域と目的遺伝子としてegfpをもつレポーター株を解析した結果、元の発現系に比べて誘導条件での蛍光強度の最大値が6.6倍となったが、非誘導条件でわずかにEGFP発現の漏れが認められた。制御の精度と発現量のいずれを優先させるかで2つの発現系の使い分けが想定された。一昨年度に、T7 pol制御にラムノース応答性プロモーター (PrhaEW) を用いて、ラムノース誘導型T7発現系の開発を試みたが、目的遺伝子 (egfp) 発現がラムノース未添加でも顕著であり、その原因が内在性ラムノースであると考えられた。今年度、生合成遺伝子の1つ (spsK) の破壊を導入したが影響は見られなかた。昨年度に、誘導物質が蓄積するようにrhaEW遺伝子の破壊を導入したegfpレポーター株の中から、ラムノース含有固体培地でEGFPを際立って高発現する自発変異株を単離した。今年度の全ゲノム解析で、PrhaEWの制御を担うRhaR転写因子の遺伝子に点変異が見つかり、これにより誘導物質に対する応答性が低下し、T7 pol発現と誘導物質の供給が低減されると考えられた。ペクチン応答性プロモーター (PrhiL) を用いて、ペクチン誘導型T7発現系を作製した。この発現系では誘導物質を添加してから明確な誘導が確認されるまでに長時間 (18時間程度) を要し、目的遺伝子発現の緩やかな増加が見込まれた。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 86 ページ: 1383~1397
10.1093/bbb/zbac128