研究課題/領域番号 |
20K05802
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
日高 將文 東北大学, 農学研究科, 助教 (00584848)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | タンパク質工学 / 転写因子 / タンパク質発現・精製 |
研究実績の概要 |
微生物は生育環境中の栄養源、ストレス源などの濃度変化を感知し、増殖や生存のため遺伝子・タンパク質の発現量を増減させる。そのメカニズムを追求していくと、どのタンパク質が関与しているのか?については分かってくる。では、それらのタンパク質はどのように物質濃度を感知しているのか?その感知した情報をどのように発現レベルにつなげているか?発現制御の分子メカニズムは、いわばブラックボックスとなっているものが多く、微生物の応用を妨げる一因ともなっている。このブラックボックスの解明には、タンパク質分子レベルの研究が不可欠である。本研究は、これまでの微生物学を含む農学研究であまり用いられることがなかった放射光の測定技術を積極的に導入し、分子レベルの微生物の発現制御メカニズム解明にアプローチする。そのための研究ターゲットとして、麹菌の4種の転写因子、AmyR、MalR、CreA、FlbCを選び、機能解析、構造解析を目指す。2021年度は、AmyR、MalRについて、機能解析、構造解析を目指して大腸菌による発現系の構築を試みた。大腸菌で発現したAmyR、MalRは封入態を形成し、可溶な状態で獲得ができなかったことから、変性剤の添加による可溶化、ならびに除去によるリフォールディング条件を検討したところ、添加剤存在下で可溶化することが分かった。リフォールディングの条件を検討することで、大腸菌1リットル培養当たり数ミリグラムのタンパク質獲得に成功した。現在、リフォールディング後のタンパク質の機能について解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写因子の研究では、タンパク質が不安定化、不溶化することで、精製タンパク質が獲得できない場合が多く、タンパク質の獲得に困難を伴うことは想定の範囲内である。そのため、AmyR、MalR、CreA、FlbCという複数の転写因子をターゲットとすることで、発現系の構築が完了したもおから順次、次のステップに進むことを計画していた。研究一年目終了時点で、MalRが不溶化の問題点を克服し、リフォールディング、精製のステップに進んだことで、本研究は計画の通り順調に進行していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
大腸菌による発現系が構築できたMalRについては、DNA結合能を評価することで機能の発現を確認する。機能発現が確認されない場合には、AmyRのリフォールディング条件を再検討する。機能解析が可能となった場合には、変異体を用いたAmyRのタンパク質科学的研究を展開する。また、X線結晶構造解析を目指して、結晶化を試みる。 AmyR、CreA、FlbCの転写因子については、引き続き大腸菌を用いた発現系の構築に取り組みつつ、並行して酵母発現系の構築も検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、進捗の状況によってはSPring8(兵庫県)や高エネルギー加速器研究所(茨城県)の放射光を利用した実験に進めるため、あらかじめ治具、測定派遣のための旅費を計上していたが、その段階まで研究が進まなかったため。次年度には実験器具や試料の調製のために使用する。また、新型コロナ感染症の状況、ならびに研究の進捗により放射光実験が可能となった場合、次年度に放射光施設の利用のために使用する。
|