令和4年度は、物質変換系へのRhodococcus宿主の活用を目指し、イミン還元酵素を用いて、より効率的に光学活性アミンを合成することを目指した。S体選択性を示すイミン還元酵素GF3546は比活性が低く、また酵素安定性が低い問題点があった。この酵素遺伝子をRhodococcus宿主で発現させても、イミンの変換効率は十分ではなかった。そこで、指向進化手法を用いて安定性を高めた結果、比活性の向上も認められた。作成した変異酵素遺伝子を導入したRhodococcus細胞を用いたイミン還元反応では、高濃度の存在下でも変換反応が継続し、400 mM以上の生成物を蓄積した。 研究期間全体を通した成果として、Rhodococcus宿主において高GC含量の異種遺伝子を発現させることは大腸菌宿主より容易であり、宿主細胞内で酵素は安定に活性を維持することが判明した。また、Rhodococcus細胞は有機溶媒耐性を示し、Rhodococcus細胞内に発現させた酵素は、大腸菌を宿主とした場合よりも有機溶媒存在下の反応で高活性を維持していた。実際の物質変換系にRhodococcus宿主を活用した結果、長時間の変換反応においても酵素活性が安定に保持され、また、基質阻害などが回避される傾向が認められた。その結果、大腸菌宿主では得られなかった高濃度での物質変換・蓄積を達成できた。イミン還元反応に必要なNADPHの再生系がRhodococcus宿主には内在するとされているが、詳細は不明であった。酵素レベルおよび遺伝子レベルでNADPH再生系について検討した結果、グルコース脱水素酵素ではなく、グルコース-6-リン酸脱水素酵素が関与している可能が示唆された。
|