研究課題/領域番号 |
20K05806
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 晃代 名古屋大学, 生命農学研究科, 招へい教員 (40727640)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新生鎖 / ペプチド / 翻訳促進 / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
本研究においては、申請者が過去の研究で見出した翻訳促進新生鎖であるSKIKペプチド配列と、大腸菌において翻訳を停止させることの知られるアレストペプチドSecM、TnaC、Clm leader配列、WPPP配列等を融合発現させ、翻訳促進新生鎖SKIKが翻訳停止ペプチドの合成に与える影響を調べた。 大腸菌無細胞タンパク質合成系により翻訳し合成物を評価したところ、SKIKペプチドが翻訳停止配列の直前に位置すると、WPPP以外の翻訳停止が解消されうることが明らかとなった。また、SKIKの位置が開始コドン直後ではなく翻訳産物の中間にある場合でもその遺伝子全長の翻訳が向上することも明らかとなった。 つまり、mRNA上でリボソームの停滞を引き起こす各種アレストペプチドの直前にSKIKという短い新生鎖が合成されると、何らかの機構でリボソーム停滞が解消される可能性が示唆された。一般的に、レアコドンやmRNAの二次構造等が翻訳効率に影響すると言われており、新生ペプチドと翻訳促進に着目した研究はあまり進んでいない。よって、今回得られた「新生ペプチド自身がその後の翻訳過程で起こりうるアレストを解除しうる」という知見は、微生物や動物細胞によるタンパク質生産、合成生物学分野の深化に寄与するものであり、学術的・産業的に意義深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの研究において、SKIKがSecMのアレストを解消できる可能性が示されたため、本年度は様々なアレストとの組み合わせを評価することに注力した。当初予定していた酵母や動物細胞系における評価がやや遅れているが、本年度の研究にて、無細胞タンパク質合成系とGFPを用いた翻訳促進ぺプチド評価系の構築に成功したため、おおむね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
大腸菌の翻訳アレストを解消可能な新生鎖ペプチドのスクリーニングとリボソームプロファイリングにより、翻訳促進機構解明を進める予定である。また、実験遂行者を増員し、酵母および動物細胞系における翻訳促進ペプチドの探索と評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用が抑えられたため次年度使用額が生じたが、必要機器および消耗品類の購入により使用予定である。
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