研究課題
鰹節のかび付け発酵熟成工程において脂質分解酵素は香味や保存性を高める鍵酵素として働いていると考えられているが、鰹節カビとその酵素群が、低水分活性下で働く発酵メカニズムは不明な点が多いのが現状である。本研究ではAspergillus chevalieriおよびA. pseudoglaucusが分泌生産する脂質分解酵素群の異種発現系を確立し、その組換え酵素の諸性質を解明することで枯節発酵に最も寄与する脂質分解酵素の触媒化学的諸性質を明らかにすることを目的とした。脂質分解酵素(A. chevalieri由来5種類およびA. pseudoglaucus由来3種類)について異種発現を試み、cLip 3およびpLip 3以外について異種発現系を構築できた。rcLip 5、pLip 2およびpLip 3はp-Nitrophenyl acylate (C6~C12)に対して高い活性を示した。魚油に対する酵素活性についてはrcLip 5やpLip 3が顕著に高い活性を示した。遊離脂肪酸の組成は、親株由来粗酵素液の結果と類似していた。疑似的に低水分活性を再現した条件で、rcLip 1、rcLip 4、pLip 1からpLip3であった。反応速度論パラメーターに与える水分活性の影響を調べると、基質に対する親和性と触媒活性の変化がみられた。親株における各酵素遺伝子の発現量を比較すると、cLip 1およびcLip 5遺伝子の発現量はその他3種の遺伝子と比較して極端に少なかった。得られた結果から鰹節の発酵熟成に関わる脂質分解酵素として遺伝子発現量とCLOに対する酵素活性を基にするとcLip 2、遺伝子発現量と低水分活性下での酵素発現を基にするとcLip 4が働くと言える。また、発現量は少ないが、CLOに対して高活性なcLip 5やpLip 3も発酵熟成に強く関わると結論した。
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