研究課題/領域番号 |
20K05810
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
春日 和 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (40315594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リグノセルロース / セルラーゼ / キシラナーゼ / Streptomyces属放線菌 |
研究実績の概要 |
リグノセルロース(LC)資化放線菌Y2944におけるLC資化能の成立ちの仕組みを明らかにし、LCを原料とした新たな有用物質生産系の構築に活用することを目的とし、R3年度は以下の成果を収めた。 1)LC資化遺伝子の発現解析:(1) Y2944のキシラン培養において高発現する遺伝子を定量的RT-PCRにより調べ、これらを発現量のパターンに基づき3グループに分類することができた。これら3グループは、それぞれキシロオリゴ糖、キシロース、及びアラビノースが関連する発現制御系の下にあることが示唆された。(2)キシラン資化時に発現し分泌されるキシラン分解酵素群の分析に取り組み、二次元電気泳動により分離したタンパク質スポットのいくつかを同定できた。これよりXyn10AyおよびXyn11ByがY2944のキシラン分解を担う主要な分泌タンパク質であることが示唆された。さらに、分解酵素以外にも新たに糖鎖結合タンパク質2種を検出し、これらのキシラン資化への関与が示唆された。(3)同様に結晶セルロース資化時にY2944が分泌するタンパク質についても分析を進めた。分泌タンパク質としてセルラーゼCel6Aを検出・同定する事ができたが、タンパク質の抽出及び分析条件の再検討が必要であることが示された。 2)C42の育種改良に有効な遺伝子の選抜:(1)有用物質生産放線菌宿主C42株に、Y2944のセルラーゼ遺伝子を個々で導入して強制発現させ、5遺伝子(cel5A, 6B, 9A, 12A, 48A)がC42のセルロース分解能を向上させることを明らかにした。今後これら遺伝子の導入により宿主の改良育種が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)「LC資化遺伝子の発現解析」(i)資化関連酵素遺伝子の転写レベルでの発現解析は、当初予定した大半の遺伝子について完了した。(ii)分泌タンパク質群の解析により、キシラン及びセルロース資化時に多種のタンパク質が検出されたが、酵素の分解が進行していることも判明した。また、菌体または固体基質に酵素タンパク質が結合している可能性が示されたため、今後、タンパク質の抽出・分析条件を再検討すべき状況にある。(iii)タンパク質解析により分解酵素以外に新たな資化関連タンパク質が見出されたため、その発現解析が今後の課題となっている。 2)「C42の育種に有効な遺伝子の選抜」(i)R3年度にはC42の結晶性セルロースの資化能を向上させるY2944セルラーゼの5遺伝子を明らかにすることができた。(ii)C42のキシラン資化を向上させる遺伝子を選抜するための発現ベクターは、検討が必要な遺伝子の多くについて構築できている。
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今後の研究の推進方策 |
1)「LC資化遺伝子の発現解析」:(i) 結晶セルロース及びキシランの資化時に分泌される分解酵素がタンパク質分解を受けずに検出できる条件を再検討し、再度主要な資化関連酵素の同定を試みる。 (ii)タンパク質解析により見出された分解酵素以外の新たな資化関連タンパク質の遺伝子の発現解析に着手する。 2)「C42の育種に有効な遺伝子の選抜」:(i)R3年度にC42の結晶性セルロースの資化能を向上させることが明らかにできた5遺伝子について、実際にこれらがモデル系の抗生物質生産系において物質生産能をも向上させられるか検討する。 (ii)これまでに構築できたキシラン資化関連遺伝子の発現ベクターをC42に導入してキシラン資化能を向上させられるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ順調に研究目的で経費執行を行ったが、年度末に予算の一部が残ってしまった。 これはR4年度に適切に研究目的で使用できる。
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