研究実績の概要 |
セルロース資化性の有用物質生産放線菌宿主Streptomyces thermocarboxydus C42株に,リグノセルロース高度資化放線菌Streptomyces galbus Y2944のセルラーゼ遺伝子を個々で導入することにより,C42宿主のセルロース資化能および物質生産能を向上させる遺伝子を特定することを目的とした。前年度に、C42株に導入するとセルロース分解活性を向上させるY2944由来のセルラーゼ遺伝子(cel5A, cel5C, cel6B, cel9A, cel12A, cel48A)が明らかになっていた。そのため本年度は、C42に抗生物質カスガマイシン(KSM)を異種生産能を与えた組換え株C42/pKSM109を抗生物質生産モデル菌株として用い、上記のセルラーゼ遺伝子を個々に導入して,セルロース分解能およびKSM生産能を調べることにした。 (i) まず,放線菌の染色体組込型ベクターに上記セルラーゼ遺伝子を個々に連結してpCEL3シリーズのセルラーゼ遺伝子組換えプラスミドを構築し、これをC42/pKSM109に導入した。(ii) 得られた組換株を可溶性セルロース基質CMCを主要炭素源として培養し,分泌されたセルラーゼ活性およびKSM生産能の向上を評価し、ここまでは遺伝子の導入効果まで調べることができた。(iii) その後,不溶性セルロース基質アビセルを炭素源とした場合についても遺伝子導入効果を評価しようとしたが,予期しなかったことに,pCEL3シリーズの遺伝子組換株が不安定であることが明らかになったため,実験を中断した。現在,この不安定性の原因究明を行っている。
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