研究課題/領域番号 |
20K05817
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
三井 亮司 岡山理科大学, 理学部, 教授 (60319936)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 植物共生微生物 / メチロトローフ / PQQ / ランタノイド / 化学コミュニケーション / メタノール / Methylobacterium / メタノール脱水素酵素 |
研究実績の概要 |
植物と微生物の共生を媒介する化合物など生産物に着目し、生物間のコミュニケーションツールとして相利的な共生関係が構築されていることを分子レベルで明らかにする。本研究課題における植物-微生物間の共生は生態系のほぼ全ての植物上で観察される普遍的相利共生系であると考えられるが、未解明の部分が多いこの共生関係では植物側からは成長に伴って生成するメタノール、微生物側からはオーキシンなどの植物成長を促す植物ホルモンや、特に注目しているPQQといった物質を生産し放出される。これらの化合物のやりとりを植物-微生物間のコミュニケーションとしてそのメカニズムを解明することを目的としている。これにより、新たな知見を得るとともに作物栽培の効率化などへの応用も期待される。 当該年度においては化学コミュニケーションを探るため、モデル菌株でもあるMethylorubrum extorquens AM1を用いて化学コミュニケーションの研究モデルを構築した。微生物が生産するPQQの活性酸素種消去能からPQQは植物の光合成により生成する活性酸素種(ROS)の消去を担っており、微生物からの光合成効率の向上による植物生育促進活性を持つと考えられる。M. extorquens AM1はランタノイドの添加により明らかなPQQ分泌活性の低下が認められた。これはランタノイドが土壌からの距離を示す指標であると考えられることから、葉上でのPQQの分泌による化学コミュニケーションのモデル系を構築することができた。今後、ランタノイドに応答してPQQ分泌を制御する因子の特定と分泌メカニズムを探り、植物の光合成を補助する微生物共生系として展開していくことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物と微生物間の共生関係を明らかにする上で、化学コミュニケーションのモデルを構築することができた。微生物が生産するPQQは光合成をサポートすると考えられている。M. extorquens AM1ほか多くのメチロトローフにおいてPQQはランタノイド非存在下で分泌が抑制されることを明らかにし、ランタノイドが微生物にとっての植物上の環境認識指標として利用される可能性が強く示唆された。このモデルの構築ができたことから次年度以降のメカニズム解明につながるものであると考えられ、概ね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
植物体の共生環境を認識するためのツールとしてランタノイドが使用されていると考えられることから、今後はランタノイドにより遺伝子発現をコントロールするしくみを明らかにする。現在、ランタノイドの存在を検知し、他の代謝関連遺伝子をコントロールする制御因子として二成分制御系因子と予測されるMxbDMが示唆されていることから、本遺伝子の破壊株の作成を行う。またこの変異株を用いてPQQの生合成及び菌体外への分泌をランタノイドの存在下あるいは非存在下でどのように振る舞うのかフェノタイプの解析を行う。これによりPQQを化学コミュニケーションの媒介物質とした植物-微生物間の共生メカニズムとして明らかにする可能性があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で学会などの出張に支障が生じた。
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