研究課題/領域番号 |
20K05820
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
本山 高幸 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (70291094)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 応用微生物 / 菌類 / ゲノム / 抗生物質 / 共生 |
研究実績の概要 |
本年度は、イネいもち病菌Pyricularia oryzaeを中心とした共生糸状菌を対象に、新しいタイプの二次代謝酵素を活用した化合物発掘及び二次代謝活性化による化合物発掘を行い、二次代謝産物の役割を解明するための基盤研究を行った。 新しいタイプの二次代謝酵素を活用した共生糸状菌からの化合物発掘では、Gloeophyllum trabeum(キノコ、植物病原菌)のグループC TAS1ホモログの大量発現株でテヌアゾン酸と類似で、テヌアゾン酸とは異なる化合物の大量生産が引き起こされることを見出していた。大量発現株を大量培養して化合物の精製を試みたが、生産量が低いために精製は困難だった。そこで、グループC TAS1ホモログのイネいもち病菌での異種発現を行ったところ、テヌアゾン酸の大量生産が認められた。宿主でのグループC TAS1ホモログの大量発現ではテヌアゾン酸の類縁化合物と推定される化合物の大量生産が認められていたため、他にも生合成に必要な酵素の遺伝子があることが示唆された。グループC TAS1ホモログ遺伝子の近傍に、修飾酵素遺伝子の候補が存在し、生合成遺伝子クラスターを形成していることが示唆された。 二次代謝活性化による共生糸状菌からの化合物発掘と活性化メカニズムの解析では、イネいもち病菌を放線菌Streptomyces griseusが生産するタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミドで処理することにより、二次代謝産物のdihydropyriculol(DHP)の生産が誘導されることを見出した。 共生糸状菌の宿主を用いた二次代謝産物の役割の解析では、DHPの生理作用は今まで知られていなかったが、DHPはS. griseusに対して強力な生育阻害活性を示すことを見出し、微生物間相互作用に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、イネいもち病菌Pyricularia oryzaeを中心とした共生糸状菌を対象に、新しいタイプの二次代謝酵素を活用した化合物発掘及び二次代謝活性化による化合物発掘を行い、二次代謝産物の役割を解明することを目的とした。グループC TAS1ホモログがグループA TAS1と同様にテヌアゾン酸を生合成することを見出した。また、テヌアゾン酸が更に修飾されて、最終産物が生じることが示唆された。更に、イネいもち病菌において、二次代謝産物のdihydropyriculol(DHP)が放線菌が生産する抗生物質であるシクロヘキシミド処理により生産誘導されること、及びDHPがシクロヘキシミド生産菌に対して強力な抗菌作用を示すことを見出した。以上のように、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、グループC及びグループD TAS1ホモログに関する解析を主に行い、関連する成果に関して学会及び論文での発表を行う。まず、Gloeophyllum trabeum(キノコ、植物病原菌)のグループC TAS1ホモログの遺伝子クラスターの遺伝子群の大量発現株を大量培養して、化合物を精製し、構造解析を行なう。次に、発掘した化合物を用いて宿主生物以外の生物に対する生育阻害活性を解析する。非宿主生物として、バクテリア、酵母、糸状菌、動物細胞等を用いる。グループD TAS1ホモログに関しては生合成メカニズムに関する解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が876,067円生じた。新しいタイプの二次代謝酵素TAS1のホモログを用いた共生糸状菌からの化合物発掘において、グループC TAS1ホモログが生産する化合物に関して様々な解析を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、研究を研究計画通り遂行することが困難であった。そのため、化合物精製や構造決定および生理作用解析等に関する研究費が減少し未使用額が生じた。 次年度は、当初の予定よりグループC TAS1ホモログ等に関する研究経費の増大が見込まれ、必要な研究費の総額が増加するため、次年度使用額876,067円はその経費に充てることとしたい。次年度に請求する研究費110万円とあわせて1,976,067円で次年度の研究を行う。140万円で物品購入を行い、研究を遂行する。旅費の10万円で研究成果の発表を行う。その他の48万円で英文校閲等を行う。
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