研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症や動脈硬化症の早期発見バイオマーカーとして有望なプラズマローゲン(Pls)の酵素定量法の確立を目指し、多様なPls分子種に対応した分別定量法の開発を目標とした。具体的には、エタノールアミン型ならびにコリン型Pls特異的ホスホリパーゼD(PlsEtn-、PlsCho-PLD)の組換え発現系の確立、各分子種に対応した検量線の作製、多様なアシル鎖組成に対応可能な改良型酵素の創製を目的とした。PlsEtn-PLDに関しては、大腸菌による組換え発現により細胞質内に親株の約8倍の酵素生産を達成した。しかしながら、活性型酵素の生産量が著しく少ないことが課題として残った。また、sn-2位アシル鎖が異なる基質への対応可能な改良型酵素の創製には至らなかった。PlsCho-PLDに関しては、シャペロン共発現プラスミドを用いることにより大腸菌による組換え発現させた。基質としてsn-2位アシル鎖が異なるPlsCho 18:1, 20:4, 22:6、ジアシル型ホスファチジルコリンを用いた基質特性試験を行った結果、本酵素はPlsCho 18:1に対してのみ作用することがわかった。rPlsCho-PLDを用いてPlsChoの検量線作製を試みた結果、5-50 ug PlsChoの範囲で直線性良く定量できることがわかった。血漿を用いて検量線を作製したところ、血漿20-40 uLの範囲で直線性良くPlsChoを定量できることが確認された。以上、本研究成果としてPlsEtn-、PlsCho-PLD両酵素は、極性頭部のみならずsn-2位アシル鎖を認識していることを明らかにしたが、その認識メカニズムの解明とsn-2位アシル鎖特異性制御までは達成することができなかった。これらについては、今後も研究を継続することで解決したいと考えている。
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