研究実績の概要 |
植物の多くは自己の花粉を拒絶して、非自己の花粉により受精する自家不和合性の機構をもつ。アブラナ科植物の自家不和合性ではSと呼ばれる一遺伝子座の複数のハプロタイプによって調節されており、花粉側と雌蕊側のもつハプロタイプが一致するとその花粉は拒絶される。アブラナ科の自家不和合性においてS遺伝子座にコードされる自家不和合性決定因子として雌蕊側では受容体型キナーゼSRKが花粉側ではそのリガンドのSP11が同定されているが、SP11を受容したSRKがどのように活性化してその情報を細胞内に伝達しているかは不明である。本研究では構造生物学的なアプローチから、SRKの活性化メカニズムの解明を目指す。 これまでにSRKのキナーゼドメインの発現と結晶化には成功しているが、高分解能な結晶が得られていない。そこで、本年度はまずSRKキナーゼドメインの発現・結晶化に利用する最適な領域を決定するために、そのN末端とC末端を短くしたコンストラクトを作製して、発現を観察した。これまでに使用していたアミノ酸残基466-8211;853の領域から、N末端側は506, 510, 514, 518から始まるコンストラクトを、C末端側は837, 823, 819, 812で終わるコンストラクトを作製して大腸菌で発現させた。発現・精製したサンプルをゲル濾過クロマトグラフィーで解析したところ、N末端側では466, 506から始まるコンストラクトでは良好な発現を示したが、510では得られるSRKタンパク質が減少し、514と518ではほぼ単量体のSRKは得られなかった。また、C末端のコンストラクトでは853, 837, 823のコンストラクトでは十分なタンパク質が得られたが、819, 812のコンストラクトでは得られなかった。これらの結果から、N末端側は506もしくは510、C末端側は823を用いるのが良いと考えられた。
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