野生型H+-PPaseやPPi分解のみを行う変異型H+-PPaseをコルメラ細胞特異的に発現させると、デンプンが減少し液胞体積の増大する表現型が観察されていた。コルメラの1-2層ではH+-PPaseとsPPase発現が局所的に低いことから、重力感知の平衡石であるデンプン粒維持のためPPi加水分解活性を低く保っているという仮説を想定していた。しかし、液胞膜局在型H+-ATPase AHA10の発現によっても同様の表現型が見られることが分かり、可溶性PPase発現株では明確な表現型が見られていないことから、PPiの減少が原因であるという当初の仮説と反していた。 液胞膜タンパク質の種類を問わず過剰発現が起きた場合に、小胞輸送系の亢進から液胞の大きさが変わるという可能性を考えた。そこで、液胞膜マーカーγ-TIP-GFPおよびGFP-Vam3をコルメラ細胞特異的に発現させる株を作出して評価した。γ-TIP-GFPはきれいな液胞膜局在を示さず、評価が困難であったが、GFP-Vam3ではまだ予備的ではあるが液胞が肥大する表現型が見られた。このことから、コルメラ細胞では液胞膜生合成自体の活性を抑えるために液胞膜局在タンパク質の発現を低く抑えていることを予想している。デンプンとの関係についてはタンパク質・脂質合成促進による炭素源の消費とプロトンポンプによるATPの消費が考えられる。定量的なデータの取得やデンプン減少の表現型がみられるかなどの解析を続けることでこれまでの仮説を修正しつつ、論文発表につなげたい。 発表論文については、katamari2にPPase破壊株と似た表現型が見られたことから、プラスチックシートによる培地との接触回避など本研究で培った実験手法を試したところ、倒伏による培地との接触が重要であることを実証することができ、本年度論文投稿につなげることができた。
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