研究課題/領域番号 |
20K05831
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
木村 幸恵 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (40855946)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 植物免疫応答 / 糖トランスポーター / 受容体様キナーゼ / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
植物に感染した病原菌は,植物細胞内の糖を細胞外へ排出させ栄養源として利用する.その一方で,植物は細胞外の糖を細胞内へ回収することでそれを阻止すると考えられている.この争奪戦には植物の細胞膜に局在する糖トランスポーターが関与することが知られているが,その糖輸送活性の制御機構については不明な点が多く残されている.本研究は,植物の免疫応答に重要な糖トランスポーターの新奇活性制御因子を同定し,その活性制御機構を明らかにすることを目的としている. 前年度の研究成果から,糖トランスポーターの制御候補因子である受容体様キナーゼが,そのキナーゼ活性を介して,細胞内の糖恒常性維持に関与していることが明らかになった.そこで本年度は,その原因を明らかにするためにqPCRを用いて,糖トランスポーターや糖合成関連遺伝子の発現量を解析した.その結果,野生型と受容体様キナーゼ欠損変異体でそれらの遺伝子の発現量に有意な差は見られなかった. また本年度は,糖トランスポーターと受容体様キナーゼとのタンパク質間相互作用解析を行った.直接的な相互作用を調べるために,先行研究から免疫応答への関与が報告されている8種の糖トランスポーターと受容体様キナーゼの細胞質領域にタグをつけた融合タンパク質をそれぞれ大腸菌から精製し,in vitro pull downを行なった.その結果,8種の中で6種の糖トランスポーターが受容体様キナーゼとin vitroで直接相互作用することが明らかになった.次に,受容体様キナーゼによる糖トランスポーターのタンパク質リン酸化を調べるためにin vitro kinase assayを行なった.その結果,受容体様キナーゼは相互作用する糖トランスポーターをin vitroでリン酸化することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖トランスポーターとその制御候補因子である受容体様キナーゼのタンパク質間相互作用とリン酸化に関する解析は順調に進展している.本年度は受容体様キナーゼとの解析に注力したため,他の新奇活性制御因子の探索について進展が遅れているが,次年度も引き続き継続する.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,質量分析法を用いた糖トランスポーターのリン酸化部位の同定を行う.また,糖トランスポーターと受容体様キナーゼを共発現させた形質転換植物を用いて,植物体におけるタンパク質間相互作用を解析する.併せて,受容体様キナーゼが糖トランスポーターの糖輸送活性に与える影響を解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度からの繰越予算が生じたため,次年度への繰越予算が生じた.また,当初は本学で行う予定であった放射性同位体標識リンを用いたリン酸化実験を共同研究先に行なって頂いたことも繰越予算が生じた理由である.繰越予算と令和4年度予算を併せて,実験試薬の購入,旅費,英文校閲費などへの支出を計画している.
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